ミツバ岳6 みつばだけ

281 2017/4/19(水) ミツバ岳 834m → 権現山 1,019




花散らしの春の大風が吹き荒れると、翌日は夏が来たような陽気。冬眠から醒めて、さて山へ登ろうか。西丹沢のミツバ岳から権現山ならば、ミツマタの花の盛りは過ぎたとはいえ、階段歩きのない山行ができる。歩行距離8km、これなら体力の落ちた僕でも楽に歩けるってことさ。御殿場線の谷峨駅で西丹沢自然教室行きのバスに乗る。この路線バスも例に洩れず、過疎地域の利用客減少により、国庫補助をはじめとした市町村の補助金を受け、なんとか路線維持している。

丹沢湖を横断する永歳橋を渡ると浅瀬入口バス停。ここで降りたのは僕と2名のハイカー。バス停脇にトンネルがある。落合隧道。その脇の木立には権現山の登り口がある。僕が復路に下ってくるところ。トンネルの先はミツバ岳の登り口。強い向かい風に逆らってトンネルを抜け、湖畔に沿う県道76号線を進む。落合隧道に続き荒井沢洞門、本村隧道を抜ける。園地に数人のカメラマンが望遠レンズを覗いている。聞くところによれば尾根を渡る大きな鳥を狙っているのだという。

 花の盛りは過ぎたミツマタ マツバ岳から見る富士山


轟音をとどろかす4段の滝を滝壺橋から眺め、橋を渡りきったところがミツバ岳への登り口。標高差500mを上る。杉林の中、展望のない九十九折れの山道を上る。ちょっとした崩壊地点を慎重に通過する。時折聞こえる重低音のうなり。あれは御殿場の自衛隊の演習地から届く砲声だ。沢音も鳥の鳴き声も聞こえなくなる。林相は杉からブナへ変わる。やっと芽吹きだしたブナ。敷き詰められた厚い落葉を踏んで上る心地よさ。山道の傾斜が緩むと花咲くミツマタの群落が現れる。

ミツバ岳。私製の山頂標識がある。この山は地権者のある山。そのためか登り口から山頂に至るまで行政による道標がない。全山黄色く彩られた山頂。茶褐色をしたミツマタの樹皮は強靱で、かつて和紙の原料として紙幣の原料に供されたが、現在では利用価値が無いという。小枝の先端は三つに分かれ、それぞれに淡く黄色い花が咲き、仄かな香りを放つ。花びらに見える部分は筒状の萼。いくら花もちがいいといっても、見頃は10日前だろう。もう色褪せてきたミツマタの花。

誰も居ないミツバ岳の山頂。樹高2mほどのミツマタの群生を潜り抜け、ミツバ岳の南面に出る。ここがミツバ岳の見所のひとつ。ミツマタの群落と杉林越しに富士山を望む。惜しむらくは山頂の左に被る白い雲、肉眼では見えても富士山の写真映りは定かではなかろう。花と富士を賞でながら軽食後、権現山へ向かう。樹間から円頂の山が見える。あれが権現山。一旦下って、はっきりしない踏み跡を上り返して権現山の西尾根に取り付く。きつい上り、左手を見れば道志の山並み。

権現山の山頂 三角点、道標がある 丹沢湖 対岸の山には満開の山桜 


権現山。上ってきた西尾根を振り返ると「ミツバ岳方面 登山道不明瞭 遭難事故多し 通行注意」との注意書きがある。6年前のこと、ミツバ岳分岐を探しながら西尾根を下る。気がつけば踏み跡は消えている。分岐を見落としたのだ。下方を見ると赤いリボンテープが見える。戻るのは面倒とばかり、立木に掴まり踏み跡なき急斜面を下る。降りきったところはヤマメ沢が大又沢に合流するところ。沢の流れは速く広い河原。対岸に渡って林道に這い上がったのさ。(#201屏風岩山3

ベンチに腰掛けている人がいる。屏風岩山まで北上すると言う。山頂には道標、三角点、ふたつのベンチがある。下山の刻、浅瀬入口バス停への降下点には「この先踏跡不明瞭 初心者の通行不向き 神奈川県」との看板があるが、尾根上の踏み跡を忠実に辿れば道迷いすることはない。はじめは緩やかな下り。左に緑色をした丹沢湖を見下ろし、右に冠雪の富士山を見る。いつまでも楽は続かない。掴まる立木もない急斜面。泣きの尾根を下って浅瀬入口バス停へ軟着陸。


晴 単独行 歩行距離=8km 歩行時間=4時間45

JR御殿場線、谷峨駅750⇒(富士急湘南バス)⇒810浅瀬入口
浅瀬入口バス停815840滝壺橋8451000ミツバ岳10201115権現山11351225富士見平12301340浅瀬入口13501400丹沢湖バス停
丹沢湖1501⇒(富士急湘南バス)⇒1525JR御殿場線、谷峨駅