屏風岩山3びょうぶいわやま) 

201 2011/4/6(水) 屏風岩山 1,051世附権現山 1,018




未曾有の災害が襲ったのは先月。4月になれば、いつものようにコブシの花が綻びソメイヨシノが花開く。被災者達にとっては遠い春であろう。心よりお見舞い申し上げます。ところでこの時期だけハイカーで賑わう丹沢の山がある。山はミツバ岳、花はミツマタ。昨年の今頃、ミツバ岳のミツマタはもう終期、その上、富士山は厚い雲の中。だから今日はリベンジの山行。コースは昨年の逆、屏風岩山からミツバ岳へ辿る。ところが想定外の道迷い、ほうほうの体のご帰還であった。


南風が吹き込んで暖かく、よく晴れた朝。富士急バスは永歳橋で丹沢湖を渡ると浅瀬入口。ミツバ岳を目指す十数名のハイカーが下車する。二本杉峠へ向かう細川橋では数名。僕は中川温泉を過ぎて大滝橋でバスを降りる。一緒に降りたおっさんはすたすたと林道に消える。屏風岩山への最短ルートは屏風岩山東峰の枝尾根に取り付けばいい。車道を少し戻って尾根の突端を眺めるとあまりの急斜面で取り付きは諦める。やはり前回下山した森林管理道から上ることにする。


畦ヶ丸への道標がある林道を進む。大滝沢の水音、鶯の囀り。歩くこと8分、涸沢脇に<森林管理道につき立入禁止>の立札がある。ここが取り付き点。丹沢の管理道はよく整備され、憶えれば便利な山道。勿論、道標などない。傾斜が緩んだ桧林のジグザグ道から抜け出すと、そこは屏風岩山への枝尾根に出る。方向は転じて西へ、鹿柵に沿って尾根道を上る。右手に樹間から箒沢権現山、振り向けば台状の大杉山が見える。すぐに今や見ごろのミツマタの群生地に入る。

ミツマタ 屏風岩山山頂


和紙の原料として知られるミツマタは、三つに分かれた褐色の枝先に、黄色い花が身を寄せ合って咲く。仄かな香り。厚く積もった落葉を踏みしめて自然林を上れば、右手に畦ヶ丸、左手に世附権現山が見える。共に堂々たる山容。屏風岩山の東峰とは気付かぬ間に通り過ぎ屏風岩山主峰へ。樹木で囲まれた山頂には三等三角点、おんぼろ山頂標識が立つ。主稜線を北へ辿れば100分で畦ヶ丸、南へ60分で二本杉峠との標示がある。二本杉峠へのルートは道迷いし易いという。


とはいえ、屏風岩山から二本杉峠までは間違えようもない一本道。展望のない自然林を緩やかに南下して桧林に入る。樹間から西丹沢の雄、桧洞丸を見る。おや、散見したミツマタがやがて群落となる。ひっそりした桧林のミツマタ群生地を過ぎると、この稜線の最大の難所、虎ロープに縋って下る急斜面が待ち受ける。緊張。ついで崩れやすい砂地の桟道で山腹を怖々へつれば、そこは二本杉峠。左へ下れば細川橋バス停へエスケープできる。ベンチが二つ。ここで昼食休憩。


権現山へ4050分の指標を見て標高差270mを直登する。植林の中、辛い上り。崩壊地のやせ尾根でちょっと一息。ここは西丹沢の山々が一望できるところ。戸沢ノ頭から大杉山へ続く台状の山並、桧洞丸や同角ノ頭、桧岳や伊勢沢ノ頭。樹相がブナ林に代って傾斜が緩むと権現山山頂。屏風岩山の北と南に権現山があるが、紛らわしいので権現山の頭に地名を付けて区別する。権現とは<日本の八百万の神は、インド起源の仏が仮の姿、権現として現れた>ものだそうだ。

二本杉峠から世附権現山へ上る途中から展望する西丹沢の山々


世附権現山山頂には二つのベンチがある。標識類は一切ない。今日初めて会った人はボランティア森林監視員、ハイカーが捨てたごみをせっせと拾っている。西南のミツバ岳方面からハイカーが三々五々上ってくる。この山頂から手っ取り早く下山するには東南へ下れば浅瀬入口バス停へ出られる。ひと休みの後、権現山に別れを告げてミツバ岳へ向かう。芽吹き未だしの自然林、落葉の絨毯、しっかりした踏み跡。気分よく下りる行く手は、ミツバ岳ならぬ迷走への入口であった。


どうもおかしい。西へ向かっている。まだミツバ岳に着かない。コースを間違えたことに気付く。それにしても、この踏み跡は何だろう。疑心暗鬼のまま尾根筋を辿れば新緑の自然林の中、いつの間にか踏み跡が消えていることに気付く。目をこらすと下方に赤いリボンテープが見える。戻れば安全だが、40分も引き返すのは嫌だ。このリボンを追ってみよう。立木に掴まりとんでもない急斜面を降りて行く。不安な気持ちを抑えて耳を澄ますと水音が聞こえる。左手からも前方からも。


降りきったところは二つの沢の合流点。沢の流れは速く広い河原。ここは何処だろう。対岸に林道のガードレールが見える。渡河点を探して河原を遡る。林道に這い上がると告知板がある。現在地は法行橋だと判明。権現山から西南へ延びる稜線の途中で南へ転ずるところ、そのまま尾根筋を進んでしまったのだ。そして北から南へ流れる大又沢に、東側からヤマメ沢が注ぎ込む出合に降りてきた。この林道を進めば帰れる。大又沢林道から世附川林道へ。ゴールは遠い丹沢湖。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=15km 歩行時間=6時間45

小田急線、新松田駅715⇒(富士急湘南バス)⇒820大滝橋
大滝橋825→屏風岩山東峰→1010屏風岩山10151120二本杉峠11301215世附権現山12251335大又沢→1350法行橋1405→大又沢林道→世附川林道→1550浅瀬入口
浅瀬入口1559⇒(富士急湘南バス)⇒1650小田急線、新松田駅