ここでは、僕が今までに読んだ本で、感動したもの、印象に深く残ったものをベスト5として紹介します。もちろんこれは固定ではなく、随時入れ替わりますのでたまに見てください。




第 1 位

『源氏物語』 紫式部



まぁ〜『源氏物語』に関しては、大学・大学院と6年間も付き合ってきましたし、今もその付き合いは続いていますから、選ばざるを得ないという感じです。でも内容はホントに素晴らしいと思います。主人公光源氏を取り巻く様々な女性たちの人間模様は、美しくもありまた悲しくもあるといった十人十色のその可憐さは、読む者をどこまでも魅了していく力があります。以前までなら「日本人なら一度は……」などと言っていましたが、僕は「人間なら一度は読むべき」作品だと思っています。




第 2 位

『破戒』 島崎藤村



部落差別という非常に大きな問題を扱った作品ですが、結局藤村自身はその結論を導くことができなかった作品です。その苦悩が主人公である瀬川丑松を通して非常に強く伝わってきます。現在では部落差別というものはほとんどなくなったと思いますが、それでも男女間、人種間、宗教間においてまだまだ差別は存在しています。そして恐ろしいことに我々は、それが当たり前であるかのように、そして知らぬフリをして日々生活しているのです。結論を出すことは難しいことかもしれないし、また明確な結論など出せないかもしれませんが、やはり藤村が立ち向かったように我々もそういったものを直視し、対決していかなければならないような気がします。そのようなことを考えさせられる作品でもありました。




第 3 位

『朗読者』 ベルンハルト・シュリンク



この本は、最近の本の中では一番のヒットでした。年齢差のある男女の恋愛。そして女性の暗い過去と真実。アウシュビッツという歴史上最も酷い虐殺の一つを背景に据え、主人公ハンナの苦悩を見事に描いた作品であると思います。作品展開における意外性もあり、どんどん読者を引き込んでいく魅力がありました。これは必読の書と言えるでしょう。




第 4 位

『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治



宮沢賢治の本はどれも素晴らしいと思いますが、やはり代表作『銀河鉄道の夜』が一番だと思います。ジョバンニとカムパネルラの銀河系への旅。この夢のある作品設定でありながら、実はカムパネルラは溺死しているという悲しい現実。賢治の作品には、このように明と暗を両方取り込む作品が多いのですが、それが矛盾することなく展開していく魅力があります。賢治の作品は子供から大人まで楽しめる素晴らしいものだと思います。




第 5 位

『春の雪』(「豊饒の海」第一巻) 三島由紀夫



三島由紀夫の作品は、言葉遣いからしてどれも難解なのですが、「春の雪」は非常に読みやすく理解しやすい作品です。これは『豊饒の海』(四巻)の第一巻ですが、他の三巻よりもこれが一番魅力的な作品でした。特に清顕と聡子の関係は、『源氏物語』を想起させる古典的なもので、その不幸とも言える両者はまるで光源氏と藤壺の関係に重ね合わせることができるように思います。また四巻全体を通して輪廻転生という一貫したテーマも非常に面白いと思います。さらに、この作品が三島の遺作であるところも意味深な気がしますね。