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作品名・作者名
あらすじ
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おすすめ度・評価
『国語力
知力をつける人間力をつける』
鵜川昇
(海竜社)
著者の鵜川氏は現在桐蔭学園中学・高校の校長をしているが、本来の専門は国語であったことからこの書を著した。そして内容の中心は現在の古典教育に対し、より一層古典に力を注ぐべきということを主張している。その主張には僕も同調してるが、もう一点著者は、言葉とは生き物で変化するものということも述べているが、その主張には一貫性がなく、ある面では「ら抜き言葉」を批判したり、若者言葉を批判したりなどしている点には多少疑問を覚えた。非常に理解しやすい書ではあると思うが、もう少し主張の一貫性が欲しかった。
★ ★ ☆ ☆ ☆
『この一冊で
日本の歴史が分かる!』
小和田哲男
(三笠書房)
この書は、日本の歴史を非常に分かりやすく説明されていて、さらに随所に見られる筆者の独自な論がとても興味を引く。もちろん、一冊で日本の歴史をすべて理解することは不可能であるが、入門書としてはなかなか良いのではないだろうか。しかし、歴史は様々な視点でみていかなければならないものなので、この書を読んだら、また別の書で、この書とは異なった視点から見ていくことも必要であろう。
★ ★ ★ ☆ ☆
『古典学入門』
池田亀鑑
(岩波文庫)
現代の古典文学研究に大きな影響かつ功績を残した池田亀鑑氏の古典文学の入門書である。特定の作品にのみ言及するのではなく、「古典」とはいったい何か、という問いからこの書は書き出されている。そして伝来・享受、またどのように「古典」を読むべきかについて、分かりやすく、しかし池田氏の絶対的な主張・主観を随所に散りばめた非常に興味深い書である。特に外国文学(クラッシック)と日本文学の比較が多く見受けられ、氏の博学さに今更ながら驚かされる。入門としては多少難しい面もあるが、自分の古典研究を今一度見直してみる必要性を強く感じる書であった。
★ ★ ★ ☆ ☆
『ことばと文化』
鈴木孝夫
(岩波新書)
人間が人間であるという最大の特徴は、言葉を使うことである。人間は、言葉という道具を使って他者と交流を持つ。しかしながら異国の間では、その道具が時としてうまく機能しないことがある。それは文化の違いがあるからだ。そんなことをこの書は描いている。普段あまり気にはしていない些細な言葉を取り上げ、非常に分かりやすく説明されている。また著者の豊富な経験が、様々な挿話を通してうかがえ、それがさらにこの書に重みを与えている。この書を読んで、もう一度言葉というものを見直してみるのもいいのではないだろうか。
★ ★ ★ ☆ ☆
『日本語練習帳』
大野晋
(岩波新書)
この書は、ベストセラーになった書で、ここから日本語ブームを巻き起こした走りになった書である。内容的には、例えば「考える」と「思う」の違いなどを解説している。もちろん一般の人々向けの書であるので、基本的な解説になっているが、僕の意見では、それほど興味を引く書であるとは思わなかった。つまらないというわけではないが、解説が淡々としていて何が重要であるのか分からなかった。ただ「お茶を一杯」と題して書かれた短いエッセイはなかなか面白かった。
★ ★ ☆ ☆ ☆
『朗読者』
ベルンハルト・シュリンク
(新潮社)
15歳の少年ミヒャエルが20歳程も離れた女性ハンナと偶然出会い、そして恋に落ちて行く。二人は年の差を気にせず、愛し合っていくが、ある日ハンナはミヒャエルに本を朗読するように頼む。それから二人は愛し合う前に朗読をするようになる。そんな日々が続いていたある日、突然ハンナはミヒャエルの前から姿を消してしまう。理由も何も分からずミヒャエルは呆然とするが、ハンナの記憶を忘れかけた大学時代、法律学を専攻していたことから、ある裁判の傍聴に行くと、なんと被告人席にハンナが立っている。その裁判は、第2次世界大戦時代のアウシュビッツで看守をしていた人々に対するものであった。ハンナにはミヒャエルと出会うはるか昔、実はアウシュビッツで看守をしていたという秘密があったのだ。さらにハンナはその主犯格とされていたが、ミヒャエルは何日も傍聴に足を運ぶたびに、ハンナが実は文盲であることに気づく。しかしそれを知る人間は他にいず、ハンナは無期懲役の刑になるのである。それから恩赦が下る18年間、ミヒャエルは刑務所のハンナのもとに朗読をしたテープを送り続ける。そして4年後、ハンナから一通のお礼の手紙が届く。ハンナは文字が書けるようになったのだ。いやというよりは書く努力を必死でしていたのだ。そしてついに18年後、恩赦によりハンナは釈放されることになり、その一週間前、二人は久しぶりの再会をし、釈放の日には迎えに行くとミヒャエルはハンナに約束する。しかし、それを待たずにハンナは刑務所で自殺してしまう。そしてミヒャエルは生涯たった一度だけハンナの墓参りをし物語は幕を閉じる。
この物語は久しぶりに激しい感動をもたらしてくれる作品であった。また様々な意味で衝撃的な作品であった。まず20歳程も年の離れた二人の恋愛。そして被告人席に立っているハンナ。文盲であったハンナ。釈放直前にこの世を去ったハンナ。恋愛という華々しい世界と、アウシュビッツの暗い過去。その両極を行き来し苦しむハンナとそれを全く知らずに悩むミヒャエル。この作品を読んでいると、フィクションであるのか実話であるのか分からなくなる程リアリティのあることに驚く。何故に最後にハンナは死を選んだのか・・・。その答えは我々読者一人一人が考えなければならない問題なのであろう。この作品は、あれだけ話題になっただけあって、素晴らしい作品であると思う。
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『源氏物語入門』
玉上琢彌
(新潮社)
この書は昭和47年に出版されたもので、かなり古い書であるが、源氏物語の入門書としてとても読みやすいものであると思う。特に書の後半に掲載されている「源氏物語私論」では、玉上氏の独特な論が展開されていて、多少源氏物語を研究されたことのある人ならばおそらく楽しめる部分ではないだろうか。ただここは全くの源氏物語初心者にはちょっと難しいかもしれない。しかし、書の3分の2は「源氏物語とその周辺」と題され、物語の背景になった平安時代について非常に分かりやすく、かつ詳細に記されているので、ここをしっかり把握してから再度物語を読み直すと、より理解が深まること間違いない。つまりこの書は、源氏物語の解説書というよりはむしろ物語の背景についての解説書と考えた方が妥当であろう。
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『日本の歴史(3) 平安時代』
保立道久
(岩波ジュニア新書)
この書は、桓武天皇にはじまり後鳥羽院で終わる、400年にもわたる平安時代について非常に分かりやすく解説されている。特に道長の築いた摂関政治と院政の違いや、皇統継承にまつわる裏話的なものまで記されていて、とても面白い。日本文学を専攻しておきながら大学入試で世界史を選んでいた僕なので、日本史についての知識はゼロに近いが、このような分かりやすい著作があると非常に助かる。これは日本史を勉強している中学生でも読んで理解できる本であろう。
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『古典文法質問箱』
大野晋
(角川文庫)
この著書は文法学者で有名な大野晋氏によって著された古典文法の入門書である。内容は大きく分けて6項目(文法の基礎知識・用言(形容詞・形容動詞)・用言(動詞)・助動詞・助詞・諸品詞/敬語/修辞)に分けられており、内容的にも非常に分かりやすい。しかしながら、本当に入門的かといえばそうとも言えない。おそらく学校文法をしっかり覚えている人にとっては、それとは随分異なることに気づくであろう。つまり大野氏の研究における独自の解釈が随所に見られるのである。それゆえ全く文法に対して知識がない人にとっては多少難しいというか、現在一般的である文法との違いに戸惑うかもしれない。だが、或る程度の文法力を持った人ならば、これほど魅力的な書はないであろう。僕は特に形容詞の項目はとても感銘を受けた。形容詞のク・シク活用の未然形が存在しない理由などが非常に明確に解説されている。手頃な書でありながら内容は相当なものがある本であったと思う。
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『伊豆の踊子』
川端康成
(新潮文庫)
伊豆に旅行に行った主人公私は、旅の道中で踊子たちに出会う。その者立ちに魅せられた私は、その後の旅を一緒に行くことにする。そこでの踊子たちとの触れ合いから、孤児根性を持っていた私の心も徐々に癒され、ますます彼女達に惹かれていくのである。しかし、旅費も少なくなったために、下田で彼女たちと別れ東京に帰ることになる。別れの時、踊子たちは疲れから熟睡していて、誰も見送りにこないはずだったのに、一人の踊子が船場で待っていてくれるのである。二人は別れの悲しみから無言のまま別れたが、船が離れていくと、踊子は大きく白いものを振って見送ってくれた。それに安心し、私は東京に帰って行く。
川端の『雪国』とともに有名な『伊豆の踊子』は、短い作品ながら、非常に美しい作品でした。とにかく文章が美しい。比喩を多発しながらも、さほど分かりにくい所もなく、中学生が読んでも理解できる作品です。中でも文章の美しさで言えば、やはり冒頭部と結末部が一番でしょう。それをここに紹介します。まず冒頭部は、「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。」で、結末部は、「頭が澄んだ水になってしまっていて、それがぽろぽろ零れ、その後には何も残らないような甘い快さだった。」です。特に解説する必要もないでしょう。これが川端の文章なのです。この作品は、内容よりも文章美が光っている作品でした。かと言って内容が悪いわけではありません。
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