#273 2016/3/31(木) ミツバ岳 834m ← 権現山 1,019m
寒の戻りが去ると丹沢にも春が来る。桜が満開になる頃、満開のミツマタが山頂を黄色く染める山がある。西丹沢のミツバ岳。菜の花と桜とコブシが同時に咲く松田町から満員のバスに乗る。丹沢湖を渡ると浅瀬入口、ここで僕と10人ほどが下車。バス停脇にトンネルがある。落合隧道。このトンネルがミツバ岳の登り口へ向かう出発点。トンネルの右側の階段が、帰路に利用する権現山の登山口。長いトンネルを抜けると湖と山の広い景色が広がる。快晴なるも遠くが霞む日。
湖畔の道路を行けばツアーバスが追い抜いてゆく。世附大橋の手前で、山の端に覗く冠雪の富士山を見る。「滝壺橋」との大きな道路標識がある。滝壺沢から轟音をたてて流れ落ちる3段の滝を橋の上から見下ろす。橋を渡り終えたところがミツバ岳の登り口。ミツバ岳とは、正しくは大出山(おおだやま)」と云い、地権者のいる山。だから登り口にも山頂にも私製の標識しかない。最近の山地図にミツバ岳の登山ルートが記載されるようになったのは、人気に押されたためだろうか。
ミツマタの花 | ミツバ岳山頂 |
桧の森をじぐざぐを描いて上る。静けさを破ってハイカーの人声が聞こえる。倒れかけて用をなさない鹿柵。放置された大量の間伐材。森の中にちらほらとミツマタの花が咲いている。上り始めて40分あまり、樹相は桧からブナに変わる。芽吹き未だしのブナ、新緑になればさぞ美しい森になるだろう。傾斜が緩むと山頂は近い。見上げれば黄色く彩られた山の頂。振り向けばミツマタの木越しに、丹沢湖がいくぶん霞んで見える。足元にミツバ岳と記された私製の山頂標識がある。
木陰に休む人、ミツマタの花を接写する人、撮影ポイントを探してうろつき回る人達。ミツマタは三つに枝分かれして、それぞれに小さな黄色い花が丸く寄り添って咲いている。花は下向きに咲き、上品な芳香を漂わせ、花びらに見える部分は筒状の萼だという。樹高はせいぜい2mほど。樹皮は繊維が強靱なため、かつて和紙の原料として紙幣や証書、株券などに供されていた。といっても、現在では利用価値は無いから伐採されることもなく、山頂を賑やかに飾っているミツマタ。
権現山山頂 | 富士見平から振り返って見る権現山 |
花の下を潜って、唯一開けた山頂の西側に出る。桧の梢の上に富士山が見える。惜しむらくは霞に浮かぶ白い富士、肉眼で見えても写真に写っているだろうか。装具を撤収して権現山に向かう。権現山の西尾根が曲者。道標はなし。鞍部から権現山へ向かう際は、踏跡不明でも強引に上ればいい。逆の場合には西尾根からの降下点を見失い易い。5年前の大失敗を思い出す。意外に急な西尾根を上って権現山。ブナに囲まれた細長い山頂には数人のハイカーが食事している。
下山はブナ林を浅瀬入口へ。権現山からは行政による道標がある。標識、「この先踏跡不明瞭、初心者の通行不向き」 心配無用、今では十分な道標が備わって道迷いすることはない。歩行距離2.8km、標高差700m。掴まる物がない恐怖の急斜面。ずるずると土を崩して富士見平。傾斜は少々緩む。梢の上から不老山に続く山並みを仰ぎ見て、樹間から丹沢湖を見下ろす。落合隧道の上から浅瀬入口に軟着陸。次のバスは1時間後。時間潰しに永歳橋を渡ってそばを食う。
快晴 単独行 歩行距離=8km 歩行時間=4時間15分
JR御殿場線、松田駅8:25⇒(富士急湘南バス)⇒9:15浅瀬入口
浅瀬入口9:20→9:45滝壺橋9:50→10:50ミツバ岳11:05→11:55権現山12:10→12:40富士見平12:50→14:00浅瀬入口14:05→14:15丹沢湖バス停
丹沢湖15:05⇒(富士急湘南バス)⇒15:25JR御殿場線、谷峨駅