鍋割山12 なべわりやま

270 2015/12/18(金) 鍋割山 1,273




寄(やどりき、よどろぎ)  後沢(うしろさわ)  地獄崩沢(ぢごくざれさわ)

気団が南下して、真冬のような寒さ。冬来たりなば例年のように丹沢に登る。丹沢は鍋割山。年初にも辿った後沢右岸尾根と寄コシバ沢をからめたルートを、今回は逆に周回しよう。寄で降りたのは僕とシダンコ山へ登る夫婦だけ。よく晴れた朝、電光掲示盤には「凍結注意、零下2度」とあったが、幸いにして無風。人っ子ひとり見かけない寄集落。中津川に沿って遡る。この川は上流では寄沢と呼ばれ、下流では酒匂川に合流する。前方に聳える山は朝陽に映える雨山、桧岳。

固く閉ざされた門扉脇を擦り抜けて寄水源林に入る。ひっそり閑としたかつてのキャンプ場。朽ちてゆく管理棟、倉庫、トイレ棟や水場を素通りし、舗装道路の尽きるところが登り口。ベンチでひと休み。百花繚乱の標示板、「登山道」「雨山峠まで3.2km」「雨山峠まで道迷い事故多発、経験者向きの沢沿いコースです。沢を渡る橋はありません」「成長の森へ山を上って左」「周遊歩道A」「熊出没注意」 石段を上って鹿柵の扉を潜り抜けると、桧林から広い河原へ降りる梯子がある。

鍋割峠から見る丹沢主稜の山々、右から蛭ヶ岳、臼ヶ岳、桧洞丸、同角ノ頭

津川から名前を変えた寄沢を渡る。対岸に取り付き、山道を歩いて砂防堤を越え、また河原に降りて沢を渡る。渡渉点には年初に無かった絵入りの標識がある。これは分かり易い。木橋やアルミ橋は一切撤去されている。こいつは困る。4回の渡渉を繰り返すと、葉が落ちて枝だけが残る樹林を鹿柵に沿って暫く歩く。「危険!荒天時は通行しないでください」との標示板の先は、無残にも両岸が崩壊している地獄崩沢。かつての鎖場も崩落し、代わりの梯子を上って対岸へ。

崩壊地をぐるりと半周して杉林に入る。ベンチがある釜場平。じぐざぐに何度も折り返して尾根筋に上る。寄コシバ沢出合には小さな標示板がある。「コシバ沢方面危険」 雨山峠への一般登山道を離れ沢を遡上する。今迄、鍋割峠から寄コシバ沢を2回下ったが、今回初めて遡る。浮石を確かめながらゴーロを歩く。右岸にところどころトレースが残っている。いつの間にか水の流れは消えている。樹木に巻かれた赤いリボンテープを見つける。ここが沢の右岸に上る取り付き点。

寄コシバ沢の右岸は霜解けの急斜面。踏み跡は滑り易く、時には崩壊した崖の縁を往く。滑落すれば遥か下の沢まで落ちる。草地まで上ると勾配は緩やかになる。寄コシバ沢の源頭を越えると斑模様に雪が積もっている。鍋割峠。標示板がある。「この先寄方面滑落注意」「鍋割山05km」 雨山を背にして鍋割山へ向かう。急登につぐ急登には連続する木段を上る。標示板、「この先崩落箇所あり通行厳重注意」 見晴しの崩落地点から玄倉川を隔てて見る丹沢主脈の山々。

鍋割山山頂から見る富士山、左は愛鷹山、右は南アルプス、すぐそこに雨山、伊勢沢ノ頭

棚沢ノ頭、不動ノ峰、蛭ヶ岳、臼ヶ岳。樹木の間から丹沢山、塔ノ岳が見える。積雪が深くなった草地の頂上直下から、振り向けば白銀の富士山を見る。鍋割山山頂。相変わらずの人気の山には昼飯を摂る十数名のハイカー。鍋割山荘名物、鍋焼きうどん1,000円也を抱える輩。冬の快晴の日となれば抜群の眺望が得られる。相模湾に突き出た真鶴半島、箱根連山、天城山。左の愛鷹山と手前の御坂山を従えた富士山。荒川三山。すぐそこに西丹沢の山、同角山稜、桧岳山稜。

雪が解けてぬかるんだ山頂から、栗ノ木洞へ続く南の稜線を下る。アセビの茂み、延々と続く木段。大パノラマを楽しみながら落葉樹林の稜線を下る。標高1,000m地点の杉林に、後沢右岸尾根への秘かな踏み跡がある。初めはじぐざぐに下る杉林。やや平坦になり、鹿柵を出入りするとP762、太尾ノ丸。順調に下ってきたのはここまで。枝打ちした杉の枝葉が登路を塞いで立ち往生。間伐材と格闘しながら、寄水源林まで辿りつく。淡い日差し、のどかな寄集落。バス停へ帰る。


快晴 単独行 歩行距離=12km 歩行時間=6時間30

新松田730⇒(富士急湘南バス)⇒755
800835寄水源林入口→850登り口8551015寄コシバ沢出合→1115鍋割峠11201150鍋割山12051245後沢右岸尾根降下点→1405登り口14151430寄水源林入口→1505
1540⇒(富士急湘南バス)⇒1605新松田