妙高山 みょうこうさん 

268 2015/10/6(火) 妙高山北峰 2,446m → 妙高山南峰 2,454m 日本100名山




頸城(くびき)三山  大倉乗越(のっこし)

高谷池ヒュッテ泊、起床は500。標高2,000mを越える高谷池は、もう冬の兆し。湿原も笹原も霜が降りて白い世界が広がる。外気温は0℃。昨日は雲に隠れて見えなかった火打山、影火打、焼山がはっきり見える。陽が昇ると朝焼けに山は赤く輝く。朝食は6時。赤飯弁当を受け取り、615高谷池を後にして、頸城三山のひとつ妙高へ出発。背丈ほどある笹を分ける木道は霜で白く水溜りに張る氷。木道は尽きて岩だらけの山道に変わる。東側が切れ落ちて視界が広がる。

オオシラビソの林を抜けて緩やかに上って茶臼山。黒沢池まで標高差160mを降る。朝日に向かって下ると、三田原山の後ろからシルエット状の妙高山と、小さな池塘が集まった黒沢湿原が目に飛び込んできた。黒沢池ヒュッテは八角形ドームの山小屋。収容人員100名。標高2,014m。小屋前は十字路。直進すれば妙高山へ、右は富士見平へ、左は神奈山へ。折しも10名程のグループが賑やかに妙高山へ出発する。この人達に最後まで後を追うことになる。ここでひと休み。

妙高山は典型的な二重式火山。馬蹄形をした爆発カルデラの外輪山と、中央火口丘となる溶岩ドームの妙高山で構成される。その外輪山の一角、大倉乗越を目指して樹林を九十九折りに上る。乗越とはいうなれば峠。振り向けば朝日を浴びた鬼ガ城の絶壁や火打山。目の前には妙高山が全容を現す。大倉乗越に先着した先程のグループリーダーのひと声で、全員がウィンドブレーカーを脱いでいる。大倉乗越は標高2,140m。乗越から長助分岐まで標高差100mを降る。

朝の黒沢池、左に黒沢池ヒュッテ 大倉乗越に上ると大きな山容の妙高山が見える


外輪山、三田原山の内側をトラバースしながら下りてゆく。油断めされるな。幅が狭く、おまけに崩れかかっている個所がある。岩稜を下降する所もある。冬場には滑落事故が絶えないそうだ。左下に、あれが長助池。紅葉した外輪山の大倉山の麓に、草紅葉の湿原の中に点在する池塘。この辺りでは湿原のことをxx池と呼ぶ。高谷池、黒沢池。長助池また然り。鞍部まで下りると水場がある。岩の間から迸る冷たい水で喉を潤す。少々上り返して長助分岐。ここにはベンチがある。

妙高山の山頂まで標高差400m。大きな岩が累々と重なりあう急登をいっきに上る。2本ストックは仕舞って、先の見えない急坂を時には両手を使って這い上がる。上から幾組ものパーティーが降りてくる。悪戦奮闘の末、やっと稜線に乗る。大岩の隙間にしめ縄が張られて奥に石祠がある。妙高山北峰2,446m。山頂標識と傍らに一等三角点がある。山頂はわりと広く、嬉々として写真を撮りあう人達。眼下には雲海が漂い360度の大展望を奪う。とても北アルプスなぞ望めない。

大岩の間を縫って妙高山南峰へ。南峰は北峰よりも8m高い。公式には妙高山の標高は2,446m。だから北峰が主峰。北峰には一等三角点があるためだろう。南峰は火山岩の山、妙高大神が祀られている。その台座に乗って集合写真を撮るあのグループ。下山は燕登山道を下る。いきなり垂直に近い岩稜を下る。鎖はないが火山岩は幸いにも足を置ける突起がある。次は最大の鎖場、15mを降る。初めは鎖、次はロープに掴まる。岩には足場が切られているから心配ない。

妙高山北峰、妙高山の主峰 標高2,100mあたりは紅葉真っ盛り、ガスが忍び寄る


鎖場を下りきると、9合目、標高2,260m、風穴まで510mの標示がある。下る山道は悪路が続く。掘割のようにえぐれた坂道、岩塊、木の根、赤土の大きな段差。岩と岩の隙間がふたつ開いた風穴を通過。標高2,100mあたり、黄葉したダケカンバ林に入る。赤や黄に染まる隣の尾根にガスが静かに流れてゆく。只の水溜りのような光善寺池を通過する。山椒魚の棲息地。やっと着いた天狗平は標高1,960m、スカイケーブルへの分岐点。石祠が天狗堂。腰を下ろして疲れを癒す。

胸突き八丁は、岩が積み重なった標高差360mの急斜面。下ってゆくと硫黄臭が漂い、沢音が聞こえる。度重なる膝への衝撃に耐えかねて、右膝に痛みが走る。已んぬる哉。下り終えれば北地獄谷に沿って岩ゴロを行く。悪路は続く。慰めは対岸の神奈山を彩る見事な錦繍。左岸へ渡り、麻平分岐を見落として、また右岸へ渡り返す。赤い沢底、乳白色の流れ。滝の音が聞こえる。北地獄谷は二段の滝となって流れ落ちる。上が称名滝、下が光明滝、併せて80m落下する。

山道は終り細いコンクリート道路に変わる。源泉作業用の道らしい。同じ妙高高原温泉郷でも、七湯の温泉があり、三色の湯色があるというから面白い。燕温泉が乳白色、関温泉が茶褐色、赤倉・新赤倉・池の平・妙高・杉野沢温泉が透明の湯だという。痛んだ右膝を庇って遅々として進まない。道路は広い林道に合流する。樹林を抜けてかつてのゲレンデ跡の草原へ出る。林道は大曲りして燕温泉に着くと、そこは温泉入口のバス停。長い山旅は終わる。間もなくバスが来る。


快晴 高谷池ヒュッテに前泊 歩行距離=95km 歩行時間=8時間30

高谷池ヒュッテ615→6:50茶臼山→720黒沢池ヒュッテ725750大倉乗越755845長助池分岐8551020妙高山北峰10301040妙高山南峰10501240天狗平13001545燕温泉
燕温泉1620⇒(妙高市民バス)⇒1651えちごトキメキ鉄道はねうまライン、関山駅