火打山 ひうちやま 

267 2015/10/5(月) 火打山 2,462m 日本100名山




頸城山群の名峰、火打山と妙高山を登る。12日の山旅。標高2,400mの山が連なる妙高連峰は、東端の妙高山から西へ火打山、焼山、金山、西端の雨飾山へと続く。冬季の豪雪は山にブナやダケカンバの広葉落葉樹の美林を育み、雪が融ければ高谷池、天狗ノ庭、黒沢池などの高層湿原に高山植物のお花畑が現れる。秋は紅葉。まさに天上の楽園。また山麓は古くより妙高温泉郷として知られる。さて、火打を先に上り始めるか、妙高にしようか、悩ましいところだ。

笹ガ森登山口の駐車スペースは既に満杯。「百名山がTV放映されると、途端に登山客が増える」とはタクシーの運転手さん。笹ガ森は火打山唯一の登山口。標高1,300m余り。まず高谷池ヒュッテまで標高差800mを上る。登山届箱のある家形ゲートを潜り、丁寧に造られた木段から緩やかに木道を上る。よく晴れた朝、少しばかり色付いたブナの森に木洩れ日が差しこむ。笹ガ森遊歩道分岐を通過。木道が時々途切れ、はびこる木の根。ブナの森にダケカンバが多くなる。

水音が高くなる。黒沢。岩を噛む清流。幅が狭いが頑丈な橋で渡る。ここからは十二曲がりと呼ばれる急登が始まる。足元には1/12から始まる埋標がある。じぐざぐを描いて上る坂道は曲がる度に数値が増してゆく。この辺りの広葉樹林は、もう黄葉真っ盛り。赤や黄に染まる向かいの尾根。十二曲がりが終っても、更なる急登が続く。次はひと抱えもある岩が累々と続く山道を上る。傾斜が緩んでオオシラビソの樹林帯を行く。富士見平。ここは高谷池と黒沢池との分岐点。

高谷池湿原、中央左に高谷池ヒュッテ、
右にキャンプ場、後方は黒沢岳
ロックガーデンから見る火打山


登山道は黒沢岳の西斜面を巻いてゆく。平坦といっても歩き難い。黄葉のダケカンバ帯を抜ける。よく伸びたネマガリダケ越しに、紅葉に彩られたなだらかな斜面を見る。左前方に火打山が現れる。折しも裾野から立ち昇る白い雲が、火打山と影火打の山頂に向かって忍び寄ってゆく。笹原を分けて木道を歩く。突然、三角屋根の高谷池ヒュッテが現れた。高谷池ヒュッテは高層湿原に建つ山小屋。妙高市観光協会が運営し、朝夕二食で¥7,200、弁当¥520。早速チェックイン。

収容人数は74名。今日の宿泊者は73名だという。急な梯子を上って3F、指定された寝床は中央あたり。サブザックにペットボトルを詰め込んで火打山へ登ろう。ヒュッテの前には高谷池湿原が広がる。その片隅にキャンプ場。色とりどりの10余りのテントが張られている。湿原に散らばる大小の池塘。この湿原は「日本の最も美しい場所31選」のひとつ。夏にはハクサンコザクラが咲き乱れるとはいうものの、黄金色に輝く草紅葉は既に終り、くすんだ茶色い草原と化している。

草紅葉も終わった天狗ノ庭、後方は双耳峰の妙高山


高谷池は標高2,100m。あと標高差360m上れば火打山。生い茂るネマガリダケを分けて、木道から木段へ、ついで積み重なった大岩を上りきるとロックガーデン。色付いた低木の木々に囲まれて、草紅葉に散らばる黒い岩。葉は落ちて赤い実を晒すナナカマド。振り返れば左にヒュッテ、右にキャンプ場を配した高谷池湿原。点在する池塘群。黒沢岳の後方に双耳峰の妙高山を見る。前方は火打山。頂を越える雲が薄れると円い山頂が見える。ロックガーデンは天狗ノ庭に続く。

高谷池よりも広い天狗ノ庭湿原は枯れ野原と化し、大小の池塘群が静かに点在する。周囲にはオオシラビソや白くむき出しになったダケカンバの群生。草紅葉の中に黒い岩。前方に地肌も露わに鬼ガ城の絶壁。登山道が整備されて間もない区画がある。煩わしいネマガリダケの切り口。槍の穂先のように上を向く。怖い。火打山は雲にすっぽりと覆われて見えない。天狗ノ庭の後方に妙高山が大きな姿を見せる。山道が平坦になって雷鳥平。ここは北限の雷鳥棲息地だという。

白いガスにまみれて小峰を越え、上り返してハイマツ帯を上ると火打山。小広い山頂には山頂標柱、三等三角点の標石がある。見晴らしが良ければ、八ヶ岳や後立山連峰の展望地。しかも富士山や佐渡ヶ島まで見えるという。活火山の焼山と成層火山の妙高山に挟まれた火打山は、海底から隆起した山。この三つの山は頸城三山と呼ばれ、火打山はその最高峰。妙高山へ登る明日を控え、今夜は高谷池ヒュッテに泊まる。下山は景色を楽しみながら上って来た途を戻る。


晴のち曇 単独行 歩行距離=115km 歩行時間=6時間

しなの鉄道北しなの線、妙高高原駅835⇒(タクシー)⇒905笹ヶ峰
笹ヶ峰9151000黒沢橋10051140富士見平11501245高谷池ヒュッテ13201345天狗ノ庭13501440雷鳥平→1510火打山15151615高谷池ヒュッテ (泊)