伊勢沢ノ頭2いせざわのかしら 

255 2014/12/23(火) 伊勢沢ノ頭山2 1,117




玄倉林道を遡るたびに、どうも気になる個所がある。境隧道を潜り抜けるとすぐ左にある玄倉川側に向かって伸びているトラバース路。この薄い踏み跡は山神峠への入口。道幅が狭い上に谷川へ傾いている。滑落すればひとたまりもなく数十m下の玄倉川へ転落する。山神峠への取り付き点は、第八隧道出口径路が崩壊のため通行不能だし、蕗平橋径路は数か所が崩落したためS社の2014版山地図には末梢されている。だから、今ではこの境隧道径路しか残っていない。

大型台風なみに発達した爆弾低気圧が大雪を降らしたのは北日本と日本海側。今日も日本列島は冬型の気圧配置。幸いにして南関東は快晴、頗る寒い朝。いつものとおり、谷峨駅で西丹沢自然教室行きの路線バスに乗り込む。5人が乗るとバスは満席となる。玄倉で、僕と三人のトレイルランナーがバスを降りる。昨日は冬至、つまり昼間の時間が1年でいちばん短い日。歩行距離17kmを7時間で歩く予定。明るいうちにゴールできるかどうか、一抹の不安を抱いて歩き出す。

丹沢湖畔の山越しに白銀の富士山が、玄倉橋からは伊勢沢ノ頭が覗く。凍結した玄倉林道を遡る。車止めゲート前には4台のマイカーが既に駐車している。玄倉川へ大きく張り出した枝尾根を潜り抜けるのが境隧道。山神峠への取り付き点はこのトンネルを抜けたところ。玄倉川に向かって頼りないトラバース路を、勇気を出して踏み込む。ザレた狭い踏み跡に積もった濡れた落葉。バランスを崩せば、足が滑べったら、奈落の底よ。崩落個所に4本の古びた丸太が渡してある。

境隧道の真上は露岩のやせ尾根 山神峠


丸木の階段を数段上ればトラバース路は終わる。斜上して折り返すと境隧道の真上に出る。意外とやせた枝尾根。露岩を越えて長い階段を上る。枝尾根の背につけられたしっかりした踏み跡。枯葉を踏み霜柱を崩して急斜面を上る。右下に、小枝に巻かれた赤いリボンテープが風に揺れている。そこは尾根筋と並行して走る林道。林道に下りて歩き出す。気が付けば尾根筋と随分離れてしまっている。失敗った、藪を漕いで柔らかい土に足を取られ四苦八苦、やっと枝尾根に戻る。

ともすれば厚く積もった落葉が踏み跡を消す。どこまで続く急坂。大分バテてきた。小さな蕾をつけたミツマタの群生地を通過。おや、雉が山道を横切って右の茂みに消えた。左手、丸坊主の樹間から丹沢の名峰の連なりが見える。石棚山、桧洞丸、同角ノ頭、臼ヶ岳、丹沢山。枝尾根を一旦下って上り返す。右に鹿柵ならぬ鹿網が現れる。大ブナの巻き道を見落として鹿柵に沿って上る。暗い自然林、杉林の中が大ブナの山頂、標高954m。さて山神峠へはどう進むのだろうか。

伊勢沢ノ頭
伊勢沢ノ頭から下るカヤトの原から振り返る
丹沢湖と富士山
伊勢沢ノ頭から下るカヤトの原から望む


山頂の外れは陽の当たるブナ林。樹林の上から富士山が見える。杉林に戻って見回すと左手の鹿柵にリボンテープが結ばれている。目をこらして下方を覗くと送電鉄塔とベンチが見える。その先、仰ぎ見る大きな山が伊勢沢ノ頭か。大ブナから直角に左へ急斜面を降りるのだ。山神峠に軟着陸。やれやれ。石積の階段の上に鎮座する山ノ神。二つのベンチ。初めて目にした道標。警告板もある。「この先ユーシン、玄倉林道の第八隧道へは登山道崩落のため通行できません」

この先は道標どおりに登る。桧岳山稜への取り付きは崩壊、上れる地点はどこだ。時々見失う踏み跡を探しながらじぐざぐに上ると枝尾根。そこには、荷上げ用モノレ−ルが桧岳山稜の主稜線まで延びる。主稜線からは10年前に歩いた径路。道標が案内してくれる。見晴しの尾根。丹沢湖と富士山、相模原、湘南の市街。山神峠、標高880mから伊勢沢ノ頭へは、標高差僅か300m、歩行距離1kmにすぎないが1時間もかけて登頂、伊勢沢ノ頭。どっと疲れが出てへたり込む。

山頂からは好展望の枯れたカヤトの草原が続く。前方にシダンコ山や高松山、箱根の山々、湘南の市街、相模湾。右手に丹沢湖、富士山。下って秦野峠。以前にあったベンチがない。樹林の中、沢を渡ってじぐざぐに上るとやせ尾根。右から現れた鹿柵に加えて左からも鹿柵が迫る。両側を鹿柵に挟まれた急坂、濡れた黒土に丸木の階段を降る。林道秦野峠。これで山下りは終わる。あとは辛い8kmの舗装された林道。歩いても歩いても同じような風景が巡る。遠い寄バス停。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=17km 歩行時間=6時間40

JR御殿場線、谷峨駅751⇒(富士急湘南バス)⇒809玄倉
玄倉815850車止ゲート855915境隧道9201055大ブナ11101115山神峠11201220伊勢沢ノ頭12351325秦野峠13301400林道秦野峠14101520寄大橋→1555
1635⇒(富士急湘南バス)⇒1700小田急線、新松田