#242 2014/1/6(月) 塔ノ岳 1,491m
冬、暦の上ではもう寒の入り。今週から来週にかけては今冬いちばんの寒さになるそうな。よく晴れた寒い朝、丹沢は塔ノ岳に登る。路線バスの登山客は10名ほど。終着は大倉。身支度を終えた人から歩き始める。僕ひとりが鍋割山方面に向かう。間延びした牛の鳴き声。杉林を抜けて、四十八瀬川沿いの西山林道を遡る。塔ノ岳へ登るルートは大倉尾根が代表的だが、今日は二俣で鍋割山への一般道と分かれ、勘七ノ沢の左岸から尾根伝いに堀山の家まで上ることにする。
退屈な1時間余りの林道歩きを終えて二俣。二俣はミズヒ沢と勘七ノ沢とが合流して四十八瀬川と名前を変えるところ。更に小丸、後沢乗越を経由して鍋割山、堀山の家への分岐点。道標には掘山の家への標示はどこにもない。その理由は、杉の幹に括りつけられた警告文を見れば分かる。<登山者の皆さんへ ここから堀山の家へ抜ける道は、道迷い等の遭難事故が多発しているため危険です 秦野市丹沢遭難対策協議会> 堀山ノ家への標示を撤去してしまったのだ。
花立から岩稜地帯を越えると残雪が増えてくる この辺りで初めて塔ノ岳が姿を現す |
塔ノ岳山頂 |
S社の山地図2013版では点線で描かれているルート。それは道標の後ろから始まり、標高差350mをいっきに上る。杉林を急登すると山腹を巻く山道になる。勘七ノ沢の轟く滝音。涸沢、つぎは勘七ノ沢に流れ込む小草平ノ沢を渡る。上流に小滝が見える。この沢が事故を誘発したらしい。今では沢の両岸にはっきりと見分けられる目印がある。かつては上から下りてきた際、対岸への渡渉個所が分からずに道迷いしたらしい。山道は勘七ノ沢を離れて杉林の枝尾根を上る。
このルートは変化に富んで面白い。霜柱を蹴散らかしてじぐざぐに上り、長い岩稜地帯を這い上がり、杉林を直登する。黄色いロープが張られた危険個所がある。踏み跡を時々見失う。尾根の高みを目指して上れば踏み跡に戻る。小草平、堀山の家。ここからは大倉尾根の一般道。数人のハイカーがベンチに休んでいる。ここにも遭難事故多発の警告書が貼られている。小憩後、さあ出発。いつものことながら、丸木の階段に泣かされる。戸沢分岐上で、花立で、またひと休み。
冬晴れの日は好展望の日。富士山の長い裾野の先に愛鷹山。逆光を浴びた箱根の山は金時山、神山。白く光る湘南の海に突き出した真鶴岬。標高13,50mあたりから残雪が深くなる。金冷ノ頭は踏み固められた雪が凍結している。滑ったらひとたまりもない。看板がある。<植生保護柵 シカは、本来は草地を好む平地の動物ですが、餌になる下草や木の芽生えが食べられています。餌になる下草を残し森林を健全な状態で後世に伝えていくために植生保護柵を設置しました>
塔ノ岳から西方を望む 手前は鍋割山稜、鍋割山 富士山の左は愛鷹山、箱根の山 |
雪にすっぽりと覆われた塔ノ岳山頂。温度は零度以下、しかも強風が吹きつける。それでも十数人のハイカーは尊仏山荘に駆け込まずに、嬉々として食事や眺望を楽しんでいる。東には表尾根縦走路の新大日ノ頭、行者ガ岳、その後方に大山。西に丹沢主稜の不動ノ峰、棚沢の頭、主峰蛭ガ岳。西丹沢の臼ガ岳、桧洞丸。朝方には笠雲の富士山、大倉尾根から見る富士は雲が消え、今は雲が覆い始めている。もう下山のとき、アイゼンを履く。これなら安心して山を下れる。
大倉尾根の階段下りを嫌って、金冷ノ頭から鍋割山稜に入る。柔らかな雪道は意外にアップダウンが激しい。小丸まで僅か8kmの距離なのにかなりのハイカーと擦れちがう。小丸、二俣への降下点。ここも二俣への標示はない。アイゼンを脱ぐ。案の定、残雪はないが雪解け後の泥濘だらけ。滑って転んだら泥まみれよ。そろりそろりと二俣へ下る。うんざりの西山林道を歩く間に日没時間が過ぎる。それでもヘッデンなしで杉林を抜ける。街灯の明るさが眩しい大倉、ゴールイン。
快晴 単独行 歩行距離=16.3km 歩行時間=8時間
小田急線、渋沢駅北口7:40⇒(神奈川中央交通バス)⇒7:55大倉
大倉8:00→9:15二俣9:20→10:30小草平、堀山の家10:40→11:35花立山荘11:50→12:10金冷ノ頭、鍋割山稜分岐→11:35塔ノ岳11:50→13:05鍋割山稜分岐→13:40小丸、二俣への降下点13:50→15:40二俣15:50→17:05大倉
大倉17:22⇒(神奈川中央交通バス)⇒17:35小田急線、渋沢駅北口