桧洞丸2 ひのきぼらまる

234 2013/5/23(木) 桧洞丸 1,601m 熊笹ノ峰 1,523大笄 1,510




ツツジの名山として知られる桧洞丸、その山頂付近に咲くトウゴクミツバツツジやシロヤシオが満開になるのは5月下旬。そこで毎年5月の最終日曜日が西丹沢の山開きの日だという。今年は来る26日。どれ久々に桧洞丸に登ろうか。ウィークデイを選んでJR御殿場線の谷峨駅から路線バスに乗る。既にバスは登山客で満員。バスを始発の新松田駅で乗らずに谷峨駅で捕まえるのは、30分も遅く家を出られるからさ。西丹沢自然教室前には所狭しとマイカーが駐車している。

瀟洒な造りの西丹沢自然教室を後にして、中川川沿いを歩きだす。山人の安全を守る山ノ神がある。ヘビノコシカケが、ここにもあそこにも。桧洞丸48kmの道標がツツジ新道の登り口。谷間を抜けて枝尾根をトラバースする。歩き易い土の道。桟道につぐ桟道。緑に染まるブナ林を下ると水音が聞こえてくる。ゴーラ沢の出合。靴の中に水が入るのを厭わず、まず東沢本流を飛び石伝いに渡り、ゴーロを歩く。か細い流れのゴーラ沢を渡れば右岸のコンクリート階段に辿り着く。

丹沢主稜を縦走した登山者が桧洞丸山頂から下りてきたとき、この沢の渡渉個所が分からず、山頂の青ガ岳山荘まで引き返したケースが続いたという。木橋を架けても雨後の激流に流されるため橋はなく、帰る登山者を指導する標識がない。そこで今ではビニールケースに入った案内図が階段に結ばれている。さてコンクリート製の急階段は鎖場へ続く。展望のない急斜面が断続するがなんだか心地いい上り。ゴーラ沢の水音が消え、鞍部から上り返すと展望台。やっとひと休み。

桧洞丸山頂付近 バイケイソウとマルバダケブキ 桧洞丸山頂


権現山の左上に見える筈の富士山は霞の中。急な上りは続く。ブナ林、アセビの群落。鉄梯子を上り、木製の階段が連続するようになると山の装いは一変する。山を彩るトウゴクミツバツツジと清楚な佇まいのシロヤシオ(ゴヨウツツジ)。赤紫と白、三つ葉と五つ葉。今年はそれでも期待外れだという。ブナとヒメシャラ林の林床を埋め尽くすバイケイソウとマルバダケブキ。勾配が緩んで植生保護の木道が始まる。気象観測機器を試験中の個所を通過。前方で話し声、桧洞丸山頂だ。

もう昼時。ブナの山頂は10人ほどの登山者が食事中。二つの山名が書かれた山頂標識が立つ。「桧洞丸」と「青ヶ岳」。石祠があっても三角点はない。その他、「火気に注意」や「キャンプ禁止」の立札。桧洞丸からは稜線が四方に伸びる。西へ石棚山稜、南へ同角山稜。東へは蛭ガ岳へ向かって丹沢主稜縦走路の稜線。北へこれから辿る熊笹ノ峰から続く尾根。降下点に立札がある。「犬越路への道は、つつじ新道に比べて危険個所が多いので、通行には十分注意してください」

腹拵えを済ませて赤土の階段を下りる。犬越路まで長い3km。バイケイソウの群落、ついで土嚢が積まれた崩壊地を分けて下れば緩やかなやせ尾根になる。そこは抜群の展望地。目の前に熊笹ノ峰から続く大小の峰、その先は大群山。惜しむらくは富士山は見えない。樹林に入る。林床はクマザサ。ブナ、カエデに混じってヒメシャラの群生。シロヤシオとミツバツツジがひと際目立つ。岩場にしっかり根を下ろしたコイワザクラ。緩やかに上り返して熊笹ノ峰。山頂標識なぞない。

シロヤシオ 犬越路から見る大笄、その奥に桧洞丸


左下に緑の山を分かつ一筋の流れを見下ろす。東沢の源流辺り。下ってやせ尾根に神ノ川(かんのかわ)分岐。ここには道標とベンチがある。この道標だけが漢字と英字が併記されているのは何故だろう。上り返して大笄(おおこうげ)の山頂。コウゲとはこのあたりの地形がかんざしの一種、笄(こうがい)に似ているからだという。桧洞丸山頂から大笄までは緩やかな起伏が続いている。薫風を正面に受けて気持いい土の尾根道。大笄を越えると油断のならない急降下が始まる。

標高1,400m付近からは岩場の下り道。小突起を越える度に鎖や鉄梯子が待ちうける。小笄の山頂を気付かずに通過する。犬越路から登ってくる数人と擦れ違う。皆うんざり顔。下生えのクマザサが背丈ほどの高さになると傾斜も弛んでくる。犬越路トンネル分岐。東沢林道への降下点。桧洞丸山頂から犬越路まで、神ノ川分岐と犬越路トンネル分岐にしか道標はない。視界が開けて犬越路避難小屋を視認すると嬉しい。振り返ればそそりたつ大笄、その後ろに桧洞丸が見える。

犬越路とは武田信玄が小田原城攻めのとき、犬を先頭に越えたことが地名の由来だという。ベンチが置かれ避難小屋がある。犬越路は峠。直進すれば上り返して大群山、右に降れば神ノ川、左は用木沢出合へ24km。小憩後笹のトンネルを抜けて用木沢を下る。難路はまだ続く。源流のゴーロ下りは辛い。この下りは東海自然歩道。道標また道標、幾つもの鉄骨コンクリート橋や桟道がある。杉林に入れば用木沢出合いは近い。あとは舗装道路を歩いて西丹沢自然教室へ。


晴 単独行 歩行距離=124km 歩行時間=6時間20

JR御殿場線、谷峨駅741⇒(富士急湘南バス)⇒835西丹沢自然教室
西丹沢自然教室840920ゴーラ沢出合→1000展望台10151140桧洞丸12051230熊笹ノ峰→1235神ノ川分岐→1240大笄→1315小笄→1400犬越路トンネル分岐→1410犬越路14201525用木沢→1550西丹沢自然教室
西丹沢自然教室1625⇒(富士急湘南バス)⇒1735新松田駅