天狗岳 （てんぐだけ）　　　　　　　　

＃223　2012/9/21（金）、22（土）　西天狗 2,645ｍ → 東天狗 2,640ｍ　日本200名山

今年の夏は耐え難い暑さだったザンショ。立秋を過ぎれば残暑と云うが、盆の頃には暑さはいや増し、処暑になっても暑さは処（おさ）まることなく連日の猛暑が続く。暑さ寒さも何とやらと云うが、彼岸に入れば秋の気配。やっと重いケツを上げて、どれ天狗岳にでも登ろうか。天狗岳とは西天狗と東天狗からなる双耳峰にして北八ガ岳の最高峰。南八ガ岳は険しい岩稜の峰々が連なるが、北八ガ岳は針葉樹林に覆われた山々。ところが天狗岳は南八ガ岳の山容を呈した山だという。


危ぶまれた天気も、長野県に入れば明るい日差しにひと安心。奥蓼科行きのバス停にはずらりと並んだ長い列。その最後尾に付く。辰野館前でバスを降りたのは8名。なんだ、この厚い雲に冷たい風は。天狗岳を登るには、渋ノ湯からの右回り周回コースが一般的だが、唐沢鉱泉を出発点とする左回りにすれば1時間は短縮できる。この左回りには、後で苦しむことになる。東天狗から渋ノ湯までは長時間の露岩が続く。露岩の上りならまだしも、僕には辛い露岩の下りであった。


辰野館前バス停の手前に八方台への登り口がある。人気のハイキングコースの入口。カラマツ林を上れば視界が開けて八方台。惜しむらくは流れる雲。南八ガ岳や南アルプス、諏訪の市街地も厚い雲の中。これから北へパノラマコースを上る。鬱蒼とした樹林はカラマツ林、林床はクマザサ。パノラマとは名ばかり、尾根筋なのに展望はない。やがて林床は一面の苔に変わる。これが実に見事な森、渋ノ湯・黒百合平への十字路まで続く。右折して今夜の宿、唐沢鉱泉へ降る。

パノラマコースを上る　カラマツ林に苔が美しい		西天狗山頂　三角点が置かれ石仏が祀られている

唐沢鉱泉は天狗岳の中腹に建つ一軒宿。源泉は10℃。鉄分、炭酸を含む硫黄泉で、効能は神経痛、創傷だとさ。さて翌日、西尾根登山口から唐沢を渡って西天狗を目指す。樹相は雑木林からダケカンバ林へと変わり、シラビソ林に入る。少々きつい上り。歩き難い濡れた露岩や木の根、苔蒸した樹林。展望はない。枯尾ノ峰分岐、西尾根の背に乗る。シラビソやコメツガの樹林、緩急繰り返して上ると視界が開けた露岩帯に出る。ほどなくハイマツが茂る第一展望台に辿り着く。


時折雲間から青空が覗く。南や中央アルプスは白い霞の中。ここで円頂の西天狗が初めて姿を現す。流れる雲、その切れ目から見え隠れする横岳、赤岳、阿弥陀岳。第二展望台では西天狗が全容を現す。大勢の登山客が南斜面に蝉のように貼りついている。西天狗へは一旦数十ｍ下り、170ｍほど上る。立ち枯れのシラビソの群落を通過する。上り始めは大きな露岩から露岩へ攀じ登る。方向は岩にペンキで描かれた○や↑印に従えばいい。悪戦苦闘の末、登頂西天狗。

西天狗の山頂からの眺望　左から東天狗、根石岳、箕冠(みかぶり)岳、その後ろに横岳

ハイマツに囲まれた裸地の山頂には二等三角点が置かれ石仏も祀られている。記念写真を撮る登山者達。眼前に南八ガ岳、吸い込まれるような硫黄岳の爆裂火口、マッチ箱のように見える根石山荘。雲間から迫る横岳や阿弥陀岳。指呼の間に東天狗、歩いて20分の距離。些か疲れたが東天狗を越えないと下山できないのだよ。鋭鋒の東天狗は露岩の積み重なった山。山頂の傍らに尖った岩稜、天狗の鼻がある。北横岳も蓼科山も姿を見せず、僅かに八柱山が見えるのみ。


見下ろせば緑なす樹林、その中に天狗の奥庭、摺鉢池、黒百合ヒュッテ。その先に台地状の稲子岳、ちょこんと頭を出すにゅう。天狗の鼻を巻いて下ると黒百合平と中山峠への分岐がある。さてどちらに降りようか。中山峠へ下るとこれが大誤算。標高差200ｍをいっきに降る露岩につぐ露岩。○や↑印を探しながら下る。疲れ果てて中山峠に降る。ここは十字路、大勢の登山者が通る。東天狗に登るグループ、直進して中山へ向かう人達。右折して稲子湯へ下るカップルもいる。


丸木を束ねた登山道を5分も歩けば黒百合平。黒百合ヒュッテの前庭はキャンプ場。ここには陽気な世界がある。赤いＴシャツを着た男がギターの弾き語りを終えると湧く拍手。時間を計算すると2時間30分で渋ノ湯に着けばいい。これが第二の誤算。延々と続く暗いシラビソの森、滑りやすい濡れた露岩また露岩。なんたる悪路。足が泣き膝が笑う。後で知るが、黒百合平から渋ノ湯へ下るのは経験者向きのコースだってさ。何人もの人に先を譲る。いつまでたっても遠いゴール。

9/21（金）　曇り　単独行　歩行距離＝3．6ｋｍ　歩行時間＝1時間50分

　JR茅野駅10：25⇒（アルピコ交通）⇒11：15辰野館前
　辰野館前11：20→11：40八方台11：50→12：35渋ノ湯分岐12：40→13：10唐沢鉱泉（泊）

9/22（土）　曇り時々晴れ　単独行　歩行距離＝7．6ｋｍ　歩行時間＝7時間50分

　唐沢鉱泉6：50→7：45枯尾ノ峰分岐7：50→8：35第一展望台→9：05第二展望台9：10→10：00西天狗10：10→10：30東天狗10：35→11：45中山峠11：55→12：00黒百合平12：10→13：05唐沢鉱泉分岐13：15→13：45丁字路、八方台分岐→14：35渋ノ湯
　渋ノ湯14：50⇒（アルピコ交通）⇒15：40JR茅野駅