#209 2011/11/2(水) 苗場山 2,145m 日本100名山
平標山(たいらっぴょうやま) 巻機山(まきはたやま) 佐武流山(さぶりゅうやま) 鳥甲山(とりかぶとやま)
紅葉の林道をタクシーは駆け上がり、和田小屋前に着く。よく晴れた空、無風。冷気が肌を刺す。静かな「かぐらみつまたスキー場」 この時期にはもう営業を終了し、冬の出番をひっそりと待つ和田小屋、ゴンドラリフト。ここは苗場山への登山口、既に五合目。登山届投入箱を前にして一抹の不安がよぎる。日没までに小赤沢へ下山できるだろうか。日の入りは16:40頃。山はその1時間前には暗くなる。下山は16:10を予定している。ヘッドライトに懐中電灯は用意してきたのだが。
ゲレンデに敷かれた木道を斜上して樹林に入る。ぬかるみは凍結し、水溜りに張る氷。山はもう冬のとば口。ブナとコメツガ林。せせらぎを聞きながら落葉を踏み、木の根を避けて、露岩の頭から頭へ渡る。やがて始まる丁寧な造りの木道と木の階段。真っ白に霜が降りたベンチは「下ノ芝」 オオシラビソ林が途切れ、やや広めの草地にとび出す。そのまま左折して上るとゴンドラリフトの上部に出る。なんだか変。ゲレンデに入り込んでしまったのだ。元の山道に戻って15分のロス。
樹林が途切れ、露岩の草地を木段で上る。「中ノ芝」 広い休憩スペースがある。ここは谷川連峰の見晴台。平標山から仙ノ倉山、茂倉岳へ続く山並み。遠く巻機山。ひと休みの後、また木段と露岩を上る。樹高は低くなり見晴しがいい。ベンチのある「上ノ芝」 ついで小松原分岐を通過すると斜度は緩む。笹の斜面の下方に青い湖面のカッサ湖を見る。顕彰碑を通過、その先に立ちはだかる「股スリ岩」を越える。ここまで続いてきた木道と木段が終わると神楽ガ峰、八合目。
神楽ガ峰と苗場山との最低鞍部から苗場山を見る | 草もみじに点在する池塘 |
苗場山の大きな山体が姿を現す。山頂までの登路を目で追う。凡そ200m下って300m上り返すことになる。石屑の多い乾いた下りの途中に水場がある。「雷清水」 最低鞍部まで下りきると今は枯れ野と化した「お花畑」 夏には高山植物が咲き乱れるという。昼食休憩後、最後の上りにかかる。北側が崩落した悪場を迂回して笹のやせ尾根を上る。最後の上りは「雲尾坂」 霜柱を崩し、重なる大岩を這い上がる。右斜面に残る雪に驚く。灌木帯を急登すれば山頂はすぐそこ。
苗場山の山頂はオオシラビソに囲まれた4km四方、700haに及ぶ溶岩台地。その一帯が高層湿原となっている。大湿原は雪が解けると高山植物の咲くお花畑、今や草紅葉の終期。点在する地塘の数は1,000を越え、そこに生えたホタルイが稲田のように見えることから苗場山と名付けられたとか。苗場山は伊米神社が祀られる農耕信仰の山、神楽を舞って奉納したのが神楽ガ峰だという。遊仙閣の横に山頂標識があるが、山小屋の裏手が苗場山の山頂。一等三角点がある。
苗場山山頂湿原 |
苗場山は県境の山。山頂には二軒の山小屋がある。新潟県側には遊仙閣、長野県側には村営の自然体験交流センターがある。共に先月末に営業を終えている。だから登山客は山小屋より一段下の木道を挟んだ二つの休憩スペースに憩う。二組の夫婦を交えて7人の先客が居る。広い湿原の先には中津川を隔てて鳥甲山、烏帽子岳、岩菅山をはじめとする上信の山々、佐武流山。東には仙ノ倉山から茂倉山へ続く谷川連峰。あれは谷川岳。巻機山に越後三山も望める。
新潟県の和田小屋から上り、長野県の小赤沢へ下る。草紅葉を縫って木道を歩む。樹林に入る手前の湿原と地塘の姿がじつにいい。立ち枯れのオオシラビソが目立つ樹林に入る。水溜りの露岩の頭を跳んで樹林を抜けるとまた湿原に出る。鳥甲山に向かって木道を進めば頂上台地の末端にベンチがある。ここが9合目「坪場」 これから標高差200m余りをいっきに下る「胸突八丁」 鎖やロープが10個所以上もある泣きの急坂。しかも、湿った岩、ぬかるみが待ち受けている。
6合目まで降ると傾斜は幾分緩む。悪路は続く。ぬかるみ、水溜り、濡れた木の根。オオシラビソとダケカンバの混成林に入ると沢音が聞こえる。灌木帯を抜けて広場に出る。3合目、駐車場。予定時刻よりも10分遅れ。これなら小赤沢まで明るいうちに着ける。折しも帰り仕度をしている熟年の夫婦が小赤沢まで送ると声をかけてくれる。小赤沢でバス待ちをしていると、通りかかった人が十日町まで送ってくれる。暮れなずむ中津川の紅葉。長野の人の心温かさに触れた山旅。
晴れのち曇り 日帰り 単独行 歩行距離=10km 歩行時間=6時間15分
上越新幹線、越後湯沢駅7:30⇒(タクシー)⇒8:00和田小屋
五合目、和田小屋8:05→9:15下ノ芝→9:25(途中、道間違え)9:40→9:45中ノ芝9:55→10:10上ノ芝→10:30神楽ガ峰→10:55お花畑11:05→12:00苗場山12:15→12:55九合目、坪場→15:10三合目、駐車場
駐車場15:15⇒(マイカーに便乗)⇒15:30小赤沢16:20⇒(マイカーに便乗)⇒17:30北越急行ほくほく線、十日町駅