#203 2011/5/15(日) 京戸山 1,439m ← 達沢山 1,358m 山梨100名山
京戸(きょうど)山、 榧ノ木平(かやのきびら)ノ頭、 三境(さんさかい)、 本社ヶ(ほんじゃが)丸
若葉が萌える5月の山、と云っても伸びた枝葉は視界を塞ぎ、下生えは踏み跡を隠す。羽虫が宙に乱舞し、アブは肌に喰らいつく。五月蝿いとはよくぞ言い得たものだ。今日登る達沢山もまさにそんな山のひとつ。山梨100名山にも名を連ねる達沢山は笹子峠の南に位置し、山と高原地図の2011年版に突如記載された寂峰。アクセスは石和温泉入口から路線バスに乗る。甲府発富士吉田行きの富士急バスは御坂みちをひた走り、葡萄畑と桃畑を抜けて御坂の山あいに入る。
立沢で降りたのは僕ひとり。快晴、無風、清々しい山の朝。<達沢山>と書かれた案内標識に従い達沢山林道を歩きだす。この道標、達沢山までは十分過ぎるほど備え付けられている。達沢橋を渡り、憐れ、削り取られた小山を見上げながら採石場を通過する。達沢の右岸に沿った林道はコンクリート舗装の道路。沢水と岩がせめぎ合う水音、けたたましい鶯の鳴き声。林道が尽きて<熊出没注意>の看板が達沢山の登り口。細い涸沢を渡り、自然林から桧林をジグザグに上る。
達沢山直下から見る富士山、手前は御坂黒岳 | 達沢山山頂、山梨100名山 |
山道を30分も上れば、達沢山と京戸山との鞍部に出る。左折すれば達沢山へ。この尾根道がまたいい。新緑の広葉樹林、南斜面はカラマツ林。ここかしこに山を彩るミツバツツジ。御坂黒岳の山の端に残雪の富士山、遠く南アルプスの農鳥岳、甲斐駒、見下ろせば甲府市街。樹林に囲まれた山頂に山梨百名山、達沢山の標柱が立つ。登頂の感慨にふけるのもそこそこに鞍部まで一旦下る。ここまでは一般登山道。この先は山地図には点線で描かれる難路。勿論道標もない。
上り返して四等三角点のあるナットウ箱山。三角点峰は本来主峰の筈。京戸山の呼称はこの一角の最高点に移され、三角点峰はナットウ山となったとか。どちらの山頂も樹林の中、居心地がいいとは言い難い。京戸山林道分岐を分けて、しっかりと踏まれた尾根道を南東へ進む。高低差がさほど感じられない稜線はうるさい藪の山道、低木のミツバツツジが歩くに煩わしい。いつの間にか富士山は御坂黒岳の左に位置して見える。やや平坦なコブを過ぎると尾根道は東へ転じる。
この稜線の最高点1,487mを過ぎるとやせ尾根に出くわす。樹木に守られて通過するものの二つ目のやせ尾根にご用心。左右両斜面が崩壊した滑りやすい土の稜線。風に乗って話し声が聞こえてくる。ひと登りして榧ノ木平ノ頭。別称は三境、標高1,411m。賑やかなグループは男性一人と女性三人。僕が下山路に予定している新田から登ってきたという。南へ、大洞山へ向かうそうな。新しい道標と登山道案内図がある。ベンチに座るとカラマツ林の上に大きな富士山が見える。
榧ノ木平ノ頭から東へ下る稜線 | 南大菩薩の雄、滝子山 |
東へ、道標が示す笹子峠への下りは変化があって面白い。歩きを阻む倒木、やせ尾根の大木、崩壊地。岩塊を這い上がり、いくつもコブを越える。この稜線はまた好展望の地。小金沢連嶺の山々、滝子山。御坂山塊の本社ヶ丸、三ツ峠山。振り返って富士山を見納めるとベンチのある三叉路に出る。小憩していると同年輩の人がやってきた。大洞山を越えてきたがお疲れの様子。このまま北へ、笹子峠へ下山するという。さて、僕は東へ、山地図には記載がない新田へ向かう。
ここからは国土地理院のHPからダウンロ−ドした1/25,000の地図を手に持って進む。暗い小峰に誰が括り付けたか<中尾根ノ頭>の木片がある。纏わりつく小藪を払い除け、落葉を蹴散らす。カラマツ林を抜けてブナ林。突然、送電線鉄塔の下に出る。西群馬線212号。尾根筋は真っすぐ延びるが、踏み跡は右下へ続いている。ジグザグの急斜面を下ると林道に軟着陸。車止めゲートの鉄枠をすり抜ければ旧甲州街道。新田はすぐそこ。心地いい風に吹かれて帰りのバスを待つ。
快晴 日帰り 単独行 歩行距離=10.5km 歩行時間=5時間15分
石和温泉駅入口8:35⇒(富士急山梨バス)⇒8:50立沢
立沢8:55→9:55達沢山登り口→10:40達沢山10:55→11:20ナットウ箱山→11:30京戸山→12:25榧ノ木平ノ頭12:35→13:30中尾根ノ頭13:35→14:10第212号鉄塔→14:40新田
新田15:36⇒(富士急山梨バス)⇒15:45JR笹子駅