鍋割山7(なべわりやま)    

199 2011/1/8(土) 鍋割山 1,273




寄(やどりき、やどろぎ)  後沢(うしろざわ)  乗越(のっこし)
左岸=川や沢の上流から見て左側をいう  右岸=上流から見て右側をいう


山里に近い山を登れば、入り組んだ枝道にまま騙されることがある。しごと道、けもの道、廃道。しかしその枝道を辿れば、一般登山道では味わえない山歩きを満喫することがある。その半面、不幸にして遭難事故が絶えない。丹沢の山とて例外ではない。かくして行政は一般登山道には丸木の階段を増設し、道標につぐ道標を増やしてきた。一方、枝道の入口をロープや木で塞ぎ、既設の道標や私設マーカーを撤去してしまった。今日歩くルートもそのような枝道のひとつである。


一昨日は小寒、今朝は今冬一番の寒さ、零下3度。快晴、無風。やどりき水源林に入って15分、後沢の出合がある。ここが後沢渓谷の入口。立て続けに三つの道標が立つ。まず作業用径路、ボランティア林A10分」 微かな踏み跡を辿れば砂防堰堤の前に「この先作業用径路、迷いやすく危険」 左手の階段を上がって堰堤を越すと鹿柵、扉を開ければ杉林。また道標「作業用径路行き止まり」 何れも後沢に侵入させまいとする意図が明白。作業用径路こそが後沢遡上への道。

 後沢に架けられた3連の木橋 桟道や渡河
 用に設けられた木橋はまだ新しい
 鍋割山山頂から見る富士山、午後には
 霞んでくる


鹿柵を出ればいよいよ後沢を遡る。いきなり桟道、2連の木橋を渡る。この先、主稜線に着くまで道標はない。ルートの間違い易いところといったら、二俣と作業道。2個所の二俣、右沢を覗けば赤いリボンが揺れている。誘惑に負けてはいけないよ、あれは偽のリボン。対岸へ渡る2個所の木橋の先には「作業道」の立札と踏み跡が見える。この木橋も渡ってはならない。兎も角、左沢を遡上すればいい。沢登りも沢歩きもする必要はなく、岩壁をへつり、桟道を越え、木橋を渡る。


おや、「多彩な広葉樹林をめざして」という説明板がある。なぜこんなところに。圧巻は沢の中の岩を渡る3連の木橋。幽谷の趣を醸す後沢。沢の流れが細くなったころ、対岸の木立に巻かれたリボンテープと鹿柵の門扉を見つける。ここが後沢左岸尾根への渡河点。作業道にしてはしっかりとした道を鹿柵に沿って緩やかに直登する。静かな杉の森、遥か下を流れる後沢の水音。あれは後沢越しに対峙する前回上った後沢右岸尾根。作業道は直登からジグザグの坂道に変わる。


上方に人声がする。森林ボランティアと名乗るご三方は僕が上ってきたのを見て吃驚している。釣り人が紛れ込んだことがあったが、登山者は初めてだと言う。最後の急坂を上り鹿柵を出るとそこは主稜線。栗ノ木洞から鍋割山へ続く稜線の一般登山道。やせ尾根を通り過ぎれば後沢乗越の道標が立つ。天気に恵まれた3連休の初日とあって、かなりのハイカーを見かける。桧岳の稜線越しに富士山が姿を現し、枯れたウツギから緑葉のアセビの群落を上りきる。鍋割山に登頂。

鍋割山山頂  1108m峰から寄コシバ沢の右岸尾根を
 降りきると登山道、寄・ユーシン線に出る


下山は雨山峠へ続く稜線を下る。大崩れから鍋割沢越しに見る丹沢主稜はまさに絶景。なんと今日見る山には霧氷がない。鍋割峠まで下って上り返す。1108m峰は何処だ、寄コシバ沢右岸尾根は何処だ。左斜面の杉の森を注意深く覗くと、杉の木立にいくつもの偽リボンマーカーが結びつけられている。こんな斜面を降りることはできない。三つめのコブには尾根らしき膨らみがある。木の幹に赤いテープが巻かれ、注意書き「注意、このテープは測量用で登山用ではありません」


そうは云ってもここが1108m峰、寄コシバ沢の右岸尾根に違いない。下方に何本かのリボンが見える。尾根筋だけ樹木が疎らに生え、左右の斜面は密生した杉林。踏み跡はないが、太陽に向かって急斜面をひたすら降れば、僅か30分で一般登山道、寄・ユーシン線に合流する。この尾根下りは寄コシバ沢を降るよりも遥かに安全かつ早い。あとは寄沢を下る一般登山道。途中、やどりき水源林への近道を知る。道標「成長の森」から寄沢を木橋で渡ればいい。満喫、ひとり旅。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=125km 歩行時間=5時間30

小田急線、新松田750⇒(富士急湘南バス)⇒815
815845寄大橋→900後沢出合→<後沢左岸尾根>→1000後沢乗越10101110鍋割山11301205P1108→<寄コシバ沢右岸尾根>→1235登山道、寄・ユーシン線→1350寄大橋13551420
1435⇒(富士急湘南バス)⇒1500小田急線、新松田