ミツバ岳みつばだけ)   

188 2010/4/8(木) ミツバ岳 835 権現山 1,015屏風岩山 1,052




桜が咲く頃、黄色い花で埋めつくされる山がある。花は和紙や紙幣の原材料として知られるミツマタ。山は西丹沢の中川川の西岸、ミツバ岳や屏風岩山。ところで僕は2月末に古稀を迎えた。古稀とは「人生七十年古来稀なり」という杜甫の詩に由来するそうだが、数えの70歳が古稀だという。すると昨年の元旦にはもう古稀ということになる。70歳になるとお手紙を頂戴する。貴殿は健保上の後期高齢者、医療費は現役並みに3割負担となります。歳はとりたくないものだ。


山巡りの旅は丹沢湖が西にくびれた湖岸の舗道歩きから始まる。まず落合隧道を抜ける。路線バスを一緒に降りたハイカーの話し声がトンネル内にこだまする。春の晴れ間は3日続かずというが久々に仰ぐ陽光。湖面を渡る冷たい風。まだ散るまいぞと頑張る満開の桜、目覚めて芽吹きだした木々。三つ目のトンネルを過ぎると滝壺橋と標示された大看板が目を惹く。橋上が観瀑台。上下併せて5段の滝が轟音をたてて流れ落ちる。満々と緑の水を湛えた滝壺がまたいい。


橋を渡り終えるところがミツバ岳への登り口。ここからミツバ岳を越えて権現山に至るルートは山地図にもガイドブックにも記載がない。だから道標などあるわけはないが、かなり確りした山道。濡れた山道をジグザグに上る。灌木林から杉林に、また灌木の林に変わる。振り向けば朝日に光る湖面、その向こうは不老山。勾配が緩むと鹿柵が現れる。やがてミツマタの群生地に入る。案じていたとおり、ミツマタはもう終期。花の盛りは過ぎ、黄色い花は色褪せて白一色のミツバ岳。

ミツマタの花 ミツマタの群生、ミツバ岳


ミツマタにも個体差があり、咲き残っている株もある。ミツマタは背丈ほどの高さの木、三つに枝分かれした先端に小さな花が丸く寄り添って咲く。淡い香りも失せて、どうやら3月下旬が見ごろだったようだ。誰も居ない平坦な山頂、ひっそりと山頂標識が立つ。西が開けて富士山を望む展望地の筈、しかし生憎厚い雲の中。休憩もそこそこに、後ろに続く連中に追いつかれまいと、吹く風に背を押されて山頂を後にする。しばらくは葉の落ちた自然林の稜線を気持ちよく下る。


秋には落葉に埋もれた踏み跡も、冬には風が落葉を吹き飛ばす。初夏には伸びた下生えに覆い隠されてしまう。だからトレースをはっきりと見分けられるのは一年のうち今ごろの季節。樹間から左に道志の山並み、右下に丹沢湖が覗く。左の杉林と右の自然林との境目を歩き急坂を下る。前方には権現山が聳える。うんざりするような高さ。鞍部から200m直登するのは辛い。やっと権現山、通称は世附(よづく)権現山。山頂標識はなく、二つのテーブルベンチがある。昼食休憩。

権現山から二本杉峠へ降る途中桧洞丸を見る 屏風岩山


権現山から屏風岩山までは一年前に歩いたところ。但し歩いたのは逆コース。北へ向かう踏み跡は明瞭、尾根筋を忠実に辿る。しんどい急坂を下る途中に初めての道標がある。出くわした崩壊地は抜群の展望地。眼下に中川温泉の集落、大きな山体の桧洞丸。849m峰を越えると二本杉峠。薄暗い桧林の中に二つのテーブルベンチがある。道標の指す右は上ノ原登山口。エスケープできるがまだまだ歩けそう。直進は踏跡不明瞭と道標に標示されている屏風岩山へ向かう。


巻道に気付かず胸を突くようなコブを上り下り。標高差300mの尾根道。アセビの群生地を通過する。屏風岩山の手前にもミツマタの群生地がある。憐れ白くなった花。やせた尾根を進むとブナの巨木群。バテ始めた足をなだめて登頂、屏風岩山。また陽が差してきた山頂は雰囲気がいい。私製と思しき山頂標識がある。右折は大滝橋Xと書かれている。このまま尾根道を北行して大滝峠上から大滝橋に降るよりも、山地図にはないが右折して東峰尾根を下れば歩行距離も短い。


こんもりとした東峰、すぐそこに畦ヶ丸。尾根道は二俣に出る。右は白いマーカーが風に揺れているが、無印の左を選んで大正解。右から鹿柵が現れる。ぐんぐん下ると、ここにもミツマタの大群落。おや、左の桧林へ踏み跡が分岐する。このまま鹿柵に沿って下りれば問題はないだろうが、あえて桧林に入る。初めは九十九折れの歩き易い山道。灌木林に入ると幸運は尽きる。急斜面につぐ急斜面。ロープに縋るいっき降り。林道に出た時はさすがに嬉しい。膝ガクの足に敢闘賞。


晴れときどき曇り 日帰り 単独行 歩行距離=11km 歩行時間=5時間

小田急線、新松田駅810⇒(富士急湘南バス)⇒901浅瀬入口
浅瀬入口905925滝壺橋9301030ミツバ岳10351120世附権現山11301205二本杉峠12101315屏風岩山1320→13:25東峰13301440大滝橋
大滝橋1447⇒(富士急湘南バス)⇒1523JR谷峨駅