#163 2008/4/22(火) 大菩薩嶺 2,057m 日本100名山
すもももももももものうち。山里を桃色に染めて咲き誇るのはモモの花、白く咲くのはスモモ(プラム)の花。車は青梅街道を駆け上がり、花盛りの果樹園を分けて、満開の桜が咲く裂石を過ぎて車止めゲート前で停まる。駐車スペースには、既に8台のマイカーが並んでいる。ほぼ満杯。ゲートの先は上日川峠へ、左は丸川峠へ。今日は丸川峠を経て大菩薩嶺へ上り、大菩薩峠から裂石に戻る周遊コースの予定。蚋と夕立に追われるように山頂から逃げ下りた日を思い出す。あれは6年前のこと。
春の天気は3日続かずという。低気圧が通り過ぎ、今日は好天、山行日和。歩き始めはミゾ沢に沿って林道を上る。激しい水音、鳥の囀り。春の音が聞こえる、春の匂いがする。それでも山はまだ覚めやらぬ冬の眠り。固く閉じた蕾。葉を落とした寒々とした林が広がる。道標に従って林道から山道に入る。落葉を踏んで岩を避け、白ザレの巻き道をジグザグに上る。支尾根を上り詰めると鞍部まで下ってまた上り返す。単調な山歩きの慰めはブナ、ナラ林から垣間見る遠望。あの白く輝く山は金峰山。
丸川峠 | 大菩薩嶺山頂 |
みんなで守ろう高山植物、と大書された赤い看板を過ぎると勾配も緩んでくる。樹林が突然に途切れて草原が広がる。丸川峠。初夏にはツツジや高山植物が咲き乱れる別天地。ロープで規制された木道を進んで峠の十字路に出る。真っ直ぐ行けば牛首谷、左は柳沢峠、鶏冠山。牧場の中の牧舎のような青い建物がある。まるかわ荘。小屋の手前を右折して大菩薩嶺へ向かう。丸木で土留めしたぬかるんだ階段、上るにつれて景色が移り変わる。富士山も南アルプスも、白い霞の中へ溶け込んでゆく。
稜線の北斜面は雪がまだらに残るカラマツ林。標高1800m。コメツガ、シラビソの針葉樹林に入ると全面の積雪。白いシャーベット状の残雪はまだしも、黒い凍結箇所はご用心。足を滑らしたら奈落の底へまっしぐら。巻き道から樹林に入ると山道が不確かになる。気が付くと古い雪の踏み跡を直登している。足跡に落葉が積もっている。昨日も今日も、誰も歩いていないようだ。そこに二つひずめの動物の足跡も加わる。頼りは幹に結ばれた赤いリボン。上る斜面は重い雪、膝まで潜る深い雪。
いくつものリボンマーカーを越えると、斜面を直登する踏み跡から左へ水平に逃げる足跡がある。よし、この足跡を辿ろうと歩くこと数分、しっかりと踏まれた雪道に出る。地図で確認すると、山道は山腹を巻いてS字を描いて緩やかに上っている。僕が辿ったのは、それをショートカットする直登なのだろう。丁度、下山してくる人に出合う。雪深い樹林の中から出てきた僕を見て驚いている。柳沢峠に車を置いてあると言う。山頂まではあと10分ですよ、との言葉を聞くと、急に足取りが軽くなる。
雷岩からの展望、上日川ダムの左は小金沢連嶺 |
山梨の森100選、大菩薩稜線のコメツガ林、と記された緑色の看板を通り過ぎる。ほどなく大菩薩嶺。展望のない頂上広場には、山頂標識と二等三角点がある。誰も居ない静かな山頂でひと時を過ごす。下山はよく踏み固められた雪道を南へ5分も歩くと樹林から抜ける。小高い岩の重なりは雷岩。眼前に大きな視界が展がる。上日川ダムを挟んで、左方に小金沢山、牛奥ノ雁ヶ腹摺山、黒岳と続く小金沢連嶺、右方に砥山、源次郎岳の連なり。だがこの時間には富士山はもう雲の中。
雷岩の南斜面は雪解けの泥んこ道。おっと、滑って左膝が泥まみれ。よし、大菩薩峠を通らずに、このまま唐松尾根をエスケープしよう。急げば1台前のバスに乗れる。悪戦苦闘15分、雪解け水が流れるガレ場を降りきってカラマツ林に入る。振り向けば雷岩から大菩薩峠までの笹の稜線が見える。福ちゃん荘、ロッジ長兵衛を通過。上日川峠下は山梨の森100選、気持ちのいいブナ林、土と落葉の道。もうじき裂石。おや、アカヤシオが咲いている。山里は春。100円バスに間に合ってグ〜。
晴 日帰り 単独行 歩行距離=11.3km 歩行時間=5時間15分
JR塩山駅8:13⇒(タクシー)⇒8:30丸川峠分岐
丸川峠分岐8:35→10:10丸川峠10:15→11:00雪道で食事休憩11:15→12:10大菩薩嶺12:20→12:25雷岩12:30→13:10福ちゃん荘→13:25上日川峠→14:15丸川峠分岐→14:25裂石
裂石14:52⇒(山梨貸切バス)⇒15:19JR塩山駅