#153 2007/10/22(月) 志賀山2,036m←横手山2,305m 信州100名山
10月も末になると、山は夏の山から冬の山に変わる。前線が北日本を通過して寒気が南下。日本海側と北日本の高山には初雪の便りが届く。予定していた戸隠山の山行もあえなく潰えてしまう。凍結した蟻の戸渡り、剣ノ刃渡を通り越すなんて思うだに背筋が寒くなる。そこで代わりに志賀の山に登る。お目当ては岩菅山。前日に志賀の最高峰、横手山に表敬訪問してから四十八池湿原へ、そして志賀山へ。久々の好天が続いた秋の一日、極上の紅葉を娯しむ山歩き。
長電は、チョーデンって呼ぶんじゃないよ。ナガ電と云うんだよ。たわわに実ったリンゴ畑と採り尽くされたブドウ畑を分けて、長野電鉄はひた走る。僅か8名の乗客を乗せた特急電車は、3両連結ロマンスカー。湯田中からは長電バス。はじめは緑濃い292号線。標高1,000mを越えるとダケカンバの黄葉が始まる。標高1,300mからは黄葉、紅葉の志賀高原となる。点在する沼沢を巡る観光客、カメラの放列。51号カーブを曲って「のぞき」に到着。長旅の終わりが山旅の出発点。
スカイレーターから見るパノラマ、手前左は笠ヶ岳、その後ろは北信五岳、奥に北アルプス |
横手山に登るに苦労はいらぬ。東は渋峠からリフトに乗って、南はスカイレーターからスカイペアリフトに乗り継げば、いとも簡単に山頂へ連れて行ってくれる。スカイレーターとは斜面を上る大ベルトコンベアさ。山麓駅から見るパノラマも、上るにつれて箱庭のように見えてくる。すぐ足元に笠ヶ岳、左手に万座山と白根山。その奥はシルエット状の妙高や飯網を抱く北信五岳。背景は白馬や鹿島槍を擁する北アルプスの白い壁。吹きつける冷風に身を縮め、揺れてリフトは横手山。
寒さに耐え切れず山頂ヒュッテに飛び込む。見晴しのウッドデッキに残る雪。ここは日本一高所でパンが生まれるところ。キノコパンの窓口に列をなして並ぶ観光客。力ウドンで身体を温めて、さあ出発。正午を過ぎの出発や、標高2,300mからの降りが、山歩きの始まりなのは珍しい。ヒュッテをひと回りすると、左手に四十八池への降下点がある。岩屑の下りは樹林に入り、抜け出してスキー場を下る。道標に従い樹林からまたゲレンデへ。横手山はコメツガに覆われた緑の山。
四十八池、池塘に映る裏志賀山 | 裏志賀山への稜線から、四十八池 |
背よりも高いチシマザサを分ける支尾根、傾斜が緩んで草津峠。<<渋峠を越える現在の車道は、昔から上州と信州の交易路でしたが、危険なためこの草津峠が開かれました。しかし第2次大戦後、荒れ果てて廃道となりました。この奥のガラン沢は大勢の人が遭難しています>> 木道を歩くようになる。ほっと安堵の吐息。硯川からの道を併せる横手山と鉢山との鞍部。<<鉢山 現在地は、鉢池をとりまく火口壁の縁にあたります。周囲の樹木はコメツガです。 環境庁、長野県>>
やわらかな秋の陽射し、静かな山。鉢山山頂のベンチでひと休み。山を下って赤石山への分岐。赤石山から降りてきた一人旅の女性に会う。樹林を抜けるとあずまやが現れる。四十八池。<<長野県天然記念物 四十八池湿原 この湿原は、志賀山と鉢山とに囲まれた標高1,880mのところにあり、大小60余個の池沼が含まれている。湿原内には、ミズバショウ、ミズギク、ワタスゲなどが生育し、モリアオガエル、クロサンショウウオなどの生育する学術上貴重な湿原である>>
裏志賀山から見下ろす大沼、赤石山 | 前山湿原、中央は横手山 |
樹林に囲まれた四十八池は草もみじも終わり、青空を映す池塘群と枯草の湿原が広がる。木道をそぞろ歩きする人、日だまりのベンチに休むカメラマン達。湿原の終端に志賀山神社の扁額を掲げた鳥居がある。木道が切れ、裏志賀山へのきつい上りが始まる。上るにつれて展開する風景が変わる。足下に見下ろす四十八池、梢の上に横手山。勾配が緩んで樹林を抜け出す。見えてきた青い大沼、魚が住まないという。どっしりと赤石山。しばし足を止め、見とれる忘我のひととき。
裏志賀山山頂は展望のない樹林。ひっそりと佇む石祠の志賀神社。裏志賀山を下って志賀山へ上る。岩と木の根に上りは助けられ、下りは泣かされる。暗い樹林の中に大小の湖沼。山道は林道となる。やがて渋池。<<渋池 標高1,800m、池の周辺と浮島にはモウセンゴケが生育しています。池畔には高山に見られるハイマツは非常に珍しいことです。 環境庁、長野県>> 視界が開けて前山湿原。一面に広がる枯草の草原。今夜の温泉宿を目指してリフトは降りてゆく。
快晴 日帰り 同行者=O君 歩行距離=7.2km 歩行時間=3時間10分
湯田中駅10:10⇒(長電バス)⇒11:10のぞき11:30⇒(横手山スカイレーター・スカイペアリフト)⇒11:40横手山山頂
横手山山頂駅12:00→13:20鉢山13:30→13:45四十八池13:50→14:15裏志賀山14:30→14:50志賀山15:00→15:45渋池→15:50前山山上駅
前山山上16:05⇒(前山リフト、5分)⇒16:10硯川 (泊)