丸山 (まるやま)     

145 2007/3/27(火) 丸山 960




山頂付近までマイカーで登れる山がある。入笠山、蔵王山、八幡平、等々。それほどの名山ではないが、丸山もそんな山のひとつである。と言っても登らずにはいられない。奥武蔵随一の展望を誇る山だというし、コースを選べばこの冬枯れの季節、極上の尾根歩きができる。西武秩父線が長い正丸トンネルで交換を終えると芦ヶ久保駅。見上げる空は鉛色、今日はいけません。冷たい朝の空気が肌を刺す。下車した数人の登山客は、寒さに首をすくめて歩き出す。


丸山への道筋が分からぬまま、駅前広場の階段を降り、横瀬川を渡る。国道際に道標がやっと見つかった。白髭神社と茂林寺前を通り過ぎて坂を上る。日向山の南斜面には点在する山上集落と33の農園がある。横瀬町芦ヶ久保の果樹公園村。イチゴ、プラム、ブドウ。この先、あるある道標と案内板。農園を縫う舗装道路はかなりきつい上り坂。たちまち身体は温まり、汗ばんでくる。公衆トイレ、あずま屋、農村公園を通り過ぎる。えっ、ゴムローラー滑り台って何だ?


石灰石の採掘で削られた武甲山の北面 丸山山頂の展望台


振り向けば奥武蔵の山並が霞んでいる。あれは武甲山北面。無残にも、えぐり取られた傷跡は石灰石の採掘跡。丸山県民の森への道標に従って山道に入る。はじめは竹林。すぐに獣害防止ネットが張り巡らされた杉林に入る。扉を開けたら閉めろか。杉の落葉を踏みしめてS字を描いて上る。私道につきバイク乗り入れ禁止の看板がある。田畑、ミズナラ林、椎茸栽培地、伐採地。山は意外に喧しい。国道からの排気音や電車の走行音が山に跳ね返って聞こえる。


芽吹きも、カタクリの花もまだ咲かない山。眠れる森に響くウグイスのひと鳴き。上りにつぐ上り。やっと平坦な杉林になる。ミズナラの根元に座す大日如来像と石塔。やがて山道は幅広の防火帯となる。林相は赤松から桧へ変わる。林道を横切って、大木の桜並木の急坂を上る。露出した桜の根っこに、丸木の階段。噴き出る汗。上りつめると埼玉県民の森の大きな案内板がある。自然林の中、笹に囲まれてあずま屋がある。そこには先行した老夫婦が休んでいる。


山の東面が県民の森。自動車道が見える。いやだねえ、駐車場から僅か15分で山頂まで上れちゃう。小峰をひとつ越えてぬかるんだ急登を上るとそこが山頂。山頂標識と砦のような展望台。生憎の曇天につき、視界は朝方よりも悪い。北アルプスや八ガ岳はおろか、秩父市街の先にある両神山すらも霞みの中。南に武甲山、二子山、武川岳などの奥武蔵の山々、それに東の堂平山がただ見えるのみ。山位同定板を見ながら浅間山や男体山を頭の中に描く。


丸山から金昌寺への尾根道、ミズナラ林 金昌寺の慈母観音


あずま屋に戻って昼食を摂る。下山路は森林館の左横を回って裏側から始まる。ゴールの金昌寺までは2時間の距離。すぐに尾根道と巻き道との分岐にさしかかる。あえて尾根道を選んで上る。砕石がばらまかれた尾根まで上って下るとまた林道。上り返すと歩きやすい土の巻き道。落葉や枯れた小枝を踏みしめる尾根道。葉の落ちたミズナラ林、鬱蒼とした桧林、間伐されたカラマツ林。歩くほどに、左手の武甲山がだんだん見上げるほど高くなってゆく。


桧の森を抜け出すと墓地の最上段。石段を降りて金昌寺本堂の裏手に飛び出す。秩父34ヶ所の観音霊場のうち4番の札所。赤子に乳をふくませる慈母観音、通称マリア観音が目を惹く。境内には千体以上もの石仏群がところ狭しと並んでいる。裏山から降りて山門から辞す。帰りのバスには40分待ち。下山が早すぎたかな。山旅の終わりはお座敷ソバ。立派な門構えの民家が蕎麦屋さん。スズメバチの巣が飾られた玄関から座敷へ通される。秩父のソバはどんな蕎麦。


曇り 日帰り 同行者=O君 歩行距離=9.5km 歩行時間=3時間30分
芦ヶ久保駅835900山道に入る9101005金昌寺・高篠分岐→1025丸山10351050金昌寺・高篠分岐11301300金昌寺13051310金昌寺前
山田1356⇒(西武観光バス)⇒1420西武秩父駅