#135 2006/10/26(水) 毛無山 1,946m 日本200名山・山梨100名山
富士山をぐるりと囲む山々のうち、富士山を眺めるには西の天子山塊が一番。大きく見えて、午後になっても太陽が被らない。天子の山とは本栖湖から南に、竜ヶ岳、雨ヶ岳、毛無山、長者ヶ岳、天子ヶ岳。他の山にあって毛無山にないものは、ヶの字。だからケ無山。毛無山は天子山塊の最高峰。同名の山が近くにあるからややこしい。西湖の北にも毛無山。釈迦ヶ岳も同様、西湖の北にも精進湖の北にもある。さて秋、労せずして紅葉も富士山も見るべけんや。
十月に入ると絶好の山行日和。下旬、久々の激しい雨と突風。今日、天気予報では晴なのに、鈍色の空。見上げると、重なり合った山と山が見える。紅葉の山肌に流れる霧。もしや毛無山。杉林を切り開いた金500也の有料駐車場を出て、鎖が渡された車止ゲートを抜ける。ここが麓集落からの毛無山登山口。大きな登山道案内図がこの山の特徴を表している。傾斜が急なので自分のペースで登りましょう。地蔵峠までのガレ場に注意してください。うん、成程。
今年はロープウェイで上ったらくちん登山も多いが、辛い登りの山もある。丹沢の塔ノ岳、奥多摩の鷹ノ巣山、日光の男体山等。標高差1,100〜1,200m、水平距離4〜6km。いずれも登るにきついことで知られる山。ところで毛無山は、標高差1,100m、水平距離はたったの3km。それを3時間かけて上る。つまり、毛無山は急勾配続きの直登する山。さて、樹林の中にひっそりと佇む神社を通り過ぎる。苔むした麓宮。道標どおりに杉林から林道に入る。
毛無山 | 不動ノ滝、落差100mの二段の滝 |
草に埋もれて金鉱石破砕機なる鉄製の遺物がある。戦国時代に、この辺りには麓金山という金鉱があったという。その後さらに開発が進み、武田氏の所領は金を大量に産出したらしい。涸沢を渡ると山道はふたつに分かれる。左が復路の地蔵峠への道。右の桧林を上ると一合目の標識。沢の水音を聞きながら山道をジグザグに上る。樹林は、ところどころに葉が色づいた自然林へ変わる。木の根や草に掴って身体を引き上げてニ合目。露岩を上りきると急に滝音が大きくなる。
不動ノ滝見晴台。支尾根の右側は深い谷、その向こうに落差100mの滝が見える。しばし見とれるニ段の滝。まさに壮観。二人の大学生が上って来たのを機にまた出発。高度を増すにつれ、笹山の斜面にはリョウブやヒメシャラの裸木が目立ってくる。樹林には赤と黄に彩られた紅葉が増してゆく。先ほどの大学生が軽い足取りで上ってきた。先を譲る五合目。この上にちょっとした広場がありますよと教えられる。登攀路のうち唯一の平坦なところ。リュックを投げ出してへたりこむ。
一合目から絶えることのないガレ場と岩場の急斜面。ロープや木の根に縋って落葉の山道を上る。足取りは重い。全身汗まみれ。大学生に抜かれ、ひとり旅のおじさんにも抜かれる。六合目で小憩、八合目でもまた休憩。それでも道標の合目の数が大きくなってゆくのが嬉しい。静かに流れる霧。当然視界はなし。コメツガやアセビが多くなり、紅葉が枯葉に変わる。ようよう主稜線に登りつく。好天ならば朝霧高原の先に富士山が眺望できた筈。今は空しく歩くコメツガやカラマツの道。
毛無山山頂 | 毛無山の主稜線 |
樹木が途切れると毛無山山頂。ほぼ予定時間どおり。山頂標識、一等三角点、山梨百名山の標識。山頂なのに珍しく無風、だが薄い霧が静かに頂を越えてゆく。それにしても寒い。早速厚着。南アルプスの雄峰も富士山すらも見えない日。昼食は久し振りに湯を沸かしてラーメン。足りないところはパン。今日は食欲がある。僕らより先行した3人に加えて、老夫婦と男性ひとりが登ってきた。腹ごしらえが出来ると下山。歩き出しは元気。ガレ場の急降下と沢の悪路も知らずに。
縦走路を南下して、麓集落への降下点を通り過ぎる。しばらくは緩斜面。紅葉の自然林に入ると一筋縄でいかない急降下。下部温泉への道を分ける第二地蔵峠。足が笑いだして1時間、やっと地蔵峠。なんと、ある筈の石仏がない。空しく置かれる石の台座と賽銭函。降下点を覗くとぎょっとするようなザレた急斜面。落葉が厚く積ったトラバースを降りる。先行していたO君の足が止まる。垂直に3mほどの岩塊。ロープで伝い下ると、高まる水音が聞こえてくる。
今までは足が笑う山下り。これからは膝が泣く沢歩き。金山沢。山道からいきなり滝下に出る。小憩。沢を渡って沢沿いの山道、また沢に降りて対岸へ渡る。幾たびもの徒渉。靴が滑って水にポシャン。暗い谷間、黒い崖、黒岩を咬む急流。洞穴から流れ落ちる滝、無名の大滝、比丘尼の滝。深山幽谷。沢に降りる。ルートを見失うまいと、岩に描かれたマークや小枝に結ばれたリボンを探す。15時前なのに暗くなる谷。歩いても歩いても辿り着けないゴール。
曇り 日帰り 同行者=O君 歩行距離=7.1km 歩行時間=5時間15分
東名道、富士IC⇒朝霧グリンパーク入口⇒毛無山登山口
麓登山口8:45→9:20不動ノ滝展望台9:25→10:15五合目広場10:25→10:35六合目10:40→11:10八合目11:15→11:40主稜線→11:50毛無山12:30→13:25地蔵峠13:30→13:50金山沢14:00→15:10麓登山口
毛無山登山口⇒朝霧グリンパーク入口⇒東名、富士IC