#132 2006/9/4(月) 男体山 2,485m 日本100名山
夏の終わりに男体山に登る。人の賑わいもなく静かな山。男体山はそのものがニ荒山(ふたらさん)神社のご神体だという。ニ荒山神社は山頂に奥宮が祀られ、中禅寺湖畔には中宮祠、日光市街には本社がある。ニ荒山とはなんだべ、とHPを探す。その昔、男体山は仏教の浄土である補陀洛山(ほだらくさん)と呼ばれたという。それがニ荒山となまり、空海が音読みして、この地を日光と名付けたそうな。中禅寺湖に面した神門をくぐり、入山料500円也を納めて記帳する。
登拝門と呼ばれる裏門が男体山の登山口。数十段のコンクリートの階段、ついで木段を上がる。左手に、蛇口から勢いよく吹き上げる噴水がある。漂う硫黄臭。温泉がなんでこんな所に。鬱蒼としたスギ林はブナ、ミズナラの森に変わる。鹿の食害除けに、網目状のプラスチックが巻かれた幹がある。ササの林床を分けて、濡れた土と木の根の急坂。山頂に向かう遥拝所が1合目。2合目の標識が見つからない。意外に足が疲れる急登、足取り重く3合目の林道に辿り着く。
人には沿ってみよ、山は登ってみよと云う。沿ったら最後一生の不覚。登ってみると急登につぐ急登、ガレ場の連続。どこから見ても丸みを帯びた端正な山容なのに、それが男体山。崩壊し続ける男体山。その砂防工事用林道がコース唯一の息抜きの道。30分ほどの林道歩きで4合目。大理石の大きな鳥居、その脇に男体山登山口と大書された看板がある。リュックを放り出すように下ろして一休み。鳥の囀りも、蝉の鳴声も聞こえない。青色のハンカチで噴き出す汗を拭う。
6合目の迂回路 | 7合目 |
えぐれた掘割のジグザグ道。行く手を邪魔する岩。滑るまいと鉄パイプの手すりを掴んで進む。樹木の切れ目から青い湖面の中禅寺湖が覗く。床板のないトタン張りの小屋を過ぎると5合目。登拝門の6時開門に上り始めたという人達が数人下りてくる。広葉樹林を抜けて観音薙に出る。ナギとは涸沢のガレ場のこと。岩塊を縫うように直登する。やがてガレ場を塞ぐ堰堤に突き当たる。6合目。案内板に従ってコメツガ林の迂回路に入る。滑る土と濡れた岩を越える暗い道。
また薙を上る。岩を越え、岩を這い上がる。ここかしこに落石注意の立て札。7合目にもまたトタン張りの小屋。上り始めの青空は既になく、曇り空。ガスの切れ目に随分小さくなった中禅寺湖畔を見る。南岸の山、その向こうに足尾の山々。慰めはダケカンバの美林、白い花咲く山野草。赤い鳥居をくぐると、やれやれ8合目。岩の上に避難小屋、大岩に挟まれて滝尾神社の祠がある。岩に腰掛けて遅い昼食。見渡すと、もう紅葉になりかけた樹木がある。山にもう秋の訪れ。
一等三角点と神剣の最高地点 | 山頂から見る中禅寺湖 |
今日の男体山は、僕にとってはリベンジの山、O君には怒りの山。実は今朝、寝坊して50分遅れで東武日光駅着。一時呆然自失。O君は、顔は笑っているが憤っているに違いない。リベンジとは、この男体山に登った4年前、高山病に罹ったのです。なんとか下山して、陽が落ちて軟着陸。爾来、避けてきた標高2400m以上の山。ところで、6日のアジアカップ・サッカー、イエメンのスタジアムは海抜2300m。ちょうど、この8合目と同じ高度。酸素濃度は平地の75%だという。
ここからは万一のため酸素ボンベを携えて上る。ガレ場は終わり、樹高の低いシラビソ林。9合目を過ぎると森林限界も越えて、赤い火山岩と砂礫が山頂まで続く。上方の大岩が山頂だよ、と降りてきた人が教えてくれる。登頂、オレッ!しかも、足に疲労があるが体調はすこぶるいい。折角持ってきた酸素だもの、と吸ってみる。生臭い。広めの山頂には、人目をひく等身大のご神像、北側の釣鐘は愛の鐘。最高地点は神剣を突き立てた岩塊。その先に一等三角点がある。
ガスが流れて見え隠れする山と湖。山位同定盤を見ながら、日光の山だけでもと、ひとつずつ確認する。すぐ北に大真名子山、小真名子山、女峰山。戦場ヶ原の先に雲に覆われた日光白根山、太郎山。中禅寺湖のほとりに社山、黒桧山。もう14時、下山のとき。山上の登山客も少なくなってきた。しっかりした足取りで、ガレ場をリズムよく下りるO君を追って、僕はこわごわガニ股下り。見下ろす中禅寺湖が、降りるにつれて大きく見えてゆく。それが嬉しい、夏の終わりに。
晴一時曇り 日帰り 同行者=O君 歩行距離=8.3km 歩行時間=5時間30分
東武日光駅9:20⇒(ワゴンタクシー)⇒9:50二荒山神社中宮祠
二荒山神社9:55→10:55四合目11:00→12:35八合目12:55→13:30男体山14:00→14:30八合目14:35→15:40四合目15:45→16:30二荒山神社
二荒山神社中宮祠16:32⇒(東武バス)⇒17:20東武日光駅