七時雨山ななしぐれやま

129 2006/7/7(金) 七時雨山 1,063 東北100名山




秋から冬にかけて降る雨、けぶる山。その詩情あふれる山名が岩崎元郎を迷わせたのだろうか。新日本100名山につい選んじゃったのが七時雨山。一日に7回も雨が降るという。ところは八幡平市。3町村が合併した新生市。近接の駅は、盛岡から1時間半も乗車する花輪線の荒屋新町。それよりも、東北新幹線が延伸してできた、いわて沼宮内(ぬまくない)の方が東京方面からの便がいい。並走する在来線はIGRいわて銀河鉄道。メルヘンの国にようこそ。


七時雨山荘に着くと、大きな自然が広がっている。ここは田代平高原。北に、牧野がせり上がって田代山。南に樹林の向こうに七時雨山。山名とは裏腹に初夏の日差し。草原を渡る風、ウグイス、水の音。七時雨山へは、道標に従って砂利道歩きから始まる。牧柵をすり抜けて牧草地に入る。車の轍を頼りに緩やかに上る。草地はやわらかく、でこぼこで案外歩きにくい。むせかえる草いきれ。鳥の囀り。眠気を誘う牛の鳴き声。牛の糞を踏まないようにご用心。


七時雨山荘 七時雨山


牧場を横切って登山口。3合目、2kmの標識が立つ。陽光まばゆい世界から薄暗い自然林に入る。ちょっと不気味。O君は熊除けのカウベルを取り出してリュックに結びつける。濡れた山道、木漏れ日の道。緑濃いブナの林、シロカンバの美林。セミが鳴き声を競う尾根を登る。6合目、樹間から東側の景色が見える。7合目、やっと勾配がゆるむと、泥んこ道の始まり。ふたつの小ピークを汗まみれで越える。鞍部から笹の急坂を登りきって七時雨山。


七時雨山は双耳峰。ここは北峰。北側だけに樹木が残る笹原の山頂広場。一等三角点に道標。昨日まで雨が降り続き、寒い毎日の盛岡だったというのが嘘のよう。夏の陽とそよ風に包まれて昼食。さすがに展望がいい。南東、白く光る一方井ダム、三角錐に整った姿の姫神山。その後方は北上山地。南に、山頂に雲がかかった岩手山、堂々たる山容。西へ続く山並みはもう奥羽山脈、八幡平。すぐ向こうの南峰が騒がしい。集団登山の小学生が山頂にひしめいている。


南峰、山頂に雲がかかった岩手山 七時雨山、南峰


急坂を駆け下りて上り返すと、下山する小学生と行き合う。口々に大声でこんにちはと挨拶される。大更小学校4年生、64名。水色のジャージ姿にランニングシューズ。ぬかるみに滑らないかしらと心配する矢先、おじさん気を付けて、とぬかしやがる。やけに先生が多い。64名の生徒に10人の付き添い。つい先日、栃木の山で小学生が行方不明になった二の舞を避けるためらしい。5名のチームはいつも一緒の行動、こまめに点呼をする、とは最後尾の若い男先生の話。


南峰は北峰よりも3m高い。標高1063m。小木と草の茂みに石造りの権現様。360度開けた山頂は遮るものがない。また俯瞰する岩手県北部。北峰に目をやると、山頂に向かって小学生が蟻のように一列になって登って行く。上りには気にならなかった泥んこ道も下りには慎重に。樹林を下って牧場に出ると、まぶしい陽光。往きに会った山菜採りの夫婦がまだ徘徊している。緑の草地に赤い屋根の山荘。振り返って七時雨山を見る。この山は小学生の100名山。


晴ときどき曇り 日帰り 同行者=O君 歩行距離=8km 歩行時間=3時間

東北新幹線、岩手沼宮内駅950⇒(タクシー)⇒1020七時雨山荘
七時雨山荘10251050三合目、登山口→1130八合目→1150北峰12251235南峰12501300北峰→1345三合目→1410七時雨山荘
七時雨山荘1420⇒(タクシー)⇒1450東北新幹線、いわて沼宮内駅