鷹ノ巣山2たかのすやま

125 2006/3/15(水) 鷹ノ巣山 1,737




春を告げる大風が吹いたのに、暖かい日と寒い日が日替わりでやって来る。今日は箱四会月例の山へ登る日。メンバーはO君と僕だけ。それならばと、奥多摩の鷹ノ巣山に登る。朝起きて見上げる東の空に明けの明星、西に満月。またとない好天のようだ。巨木と清流の町、奥多摩。鍾乳洞行きのバスは男ばかり5人だけ。あのおばちゃん族は冬眠をきめこんでいるらしい。日原街道をひた走ったバスは、前方に山を切り崩す採石場が見えると、長い日原トンネルに突入する。


中日原集落の数軒先に、登山口と書かれた板がある。日原川に降りる階段、しかも薄く雪が積もっている。よくない前兆。杞憂に過ぎなければいいがと願いも空しく、後刻、山頂直下で雪と氷に悪戦苦闘することになる。杉林を抜けて、日原川を巳ノ戸橋で渡り、巳ノ戸沢を遡る。ともすればルートを見失いがちな河原。大小の岩を越え、沢を何度も渡り返して右岸の雪道を上る。ジグザグに上るこの山道は、稲村岩と呼ばれる大岩峰をぐるりと半周して鞍部に辿り着く。


ツゲの木に囲まれてひと休み。さて、奥多摩一の急登という稲村岩尾根を上る。稜線の山道はブナ林。右に樹幹越しに見える尖った八丁山。左上に仰ぎ見る、あれは鷹の巣山。コツコツと音が聞こえる。あそこに、嘴を幹に叩きつけるキツツキが。鳥の声も聞こえる。山にも春の訪れ。うっすらと積もった雪も高度を上げるにつれて深くなってくる。急登も積雪もなんとかこなして、やっと平坦なヒルメシ食いのタワ。ここで昼飯食いましょか。いえいえ、あと30分で山頂ですよ。


中日原から稲村岩を望む

鷹ノ巣山山頂


胸を衝くように聳える山頂。おまけに北斜面の登攀路は厚く積った雪。路面は凍結。昨夜降った雪の下には不気味な青い氷が覘く。滑るまいと、雪面に靴底をぴたりと合わせて体重移動する。道端の小笹を掴んで身体を引き上げる。雪に印されたトレースは一人だけ。この人はいつの間にかアイゼンで歩いている。気が付けば後の祭り。こんな急坂ではアイゼンも履けず、戻るに戻れない。一再ならず滑落、転倒。恐怖の氷坂をイナバウワーで滑ってトーランドット。


鷹ノ巣山からの眺望は感動もの。息を呑むように展がるパノラマ。好天に恵まれ、遠望できる日。奥多摩の山並みのうち、ひと際目立つ三頭山。秀麗富士の山、大菩薩の大きな山容、南アルプスの雄大な白い壁。北側はカラマツの樹林にシロカンバの美林。まだら模様に雪が積もる山頂広場。中央には山頂標識と2等三角点。標識に掛けられた温度計によると摂氏6度。冷たい風を避けて昼食を摂ろう。幸いなことに食欲旺盛。湯を沸かして、温かいうどんが嬉しい。


石尾根から 榧ノ木尾根


岩に腰掛けて風景に見入っていた先客は、稲村岩尾根を下りるという。滑ったら制動の効かないリュージュかボブスレーだぜ。すると、その稲村岩尾根から若者が上ってきた。あれ、中日原から僕たちより先に出発したお兄ちゃんだ。巳ノ戸沢で道を間違えたという。しかも初めての山登りらしい。下山は西の峰谷に下りるという。さて、下山ルートと時間をチェックする。上りに思わぬ時間がかかって予定より30分遅れ。O君の計算では次のバスにも間に合わないという。心配ないよ。


下山は石尾根から榧ノ木尾根を降る。石尾根は雲取山から東へ、奥多摩駅方面に続く尾根。名だたる山といえば、七ツ石山、鷹ノ巣山、六ツ石山など。稜線は防火帯として伐採された幅広い草地。初夏ともなれば草花が咲き乱れるという。枯れ草に積ったシャーベット状の雪は頗る歩きやすい。何も遮るものがない、気持ちいい尾根歩き。程なく榧ノ木尾根への降下点。榧ノ木尾根とは書かれていなくとも、どんな道標であれ、水根、熱海、倉戸山という指標に進めばいい。



奥多摩湖畔まで続く榧ノ木尾根のブナ林。榧とは、実が油の原料となる常緑樹だというが、どの木が榧の木か判らない。新緑の頃、紅葉の頃、もう一度歩いてみたい尾根下り。さすが南面の稜線。雪はとうに消え、厚い落葉を蹴散らして下る。いつの間にか榧ノ木山を巻いて通り過ぎ、ゆるく上り返して倉戸山。榧ノ木尾根を猪のように駆け下りて、30分の遅れを取り戻した上に、当初の予定時間よりも30分前に倉戸口に到着。氷坂、大パノラマ、落葉の絨毯。それが晩冬の山歩き。


快晴 日帰り 同行者=O君 歩行距離=11.1km 歩行時間=5時間35

奥多摩駅810⇒(西東京バス)⇒835東日原(ひがしにっぱら)
東日原8:45→9:35稲村岩9:45→11:30ヒルメシ食いのタワ11:45→12:30鷹ノ巣山13:20→14:10榧ノ木(かやのき)山→14:50倉戸山15:00→15:45倉戸口
倉戸口16:20⇒(西東京バス)⇒16:35奥多摩駅