#117 2005/11/1(月) 三頭山 1,531m 日本300名山・山梨100名山
奥多摩湖の南側に大きな山がある。大岳(おおだけ)山、御前山、それに三頭(みとう)山。奥多摩三山という。とりわけ、堂々とした山容の三頭山と円頂の大岳山は、同定しやすい山。さて今日は、K君の山登りデビューの日、I君のカムバックの日。タフなO君を交えて4人揃えば、2時間以内で山頂に立てて、麓に温泉がないと満足してくれない。そこで、人気の三頭山へ登る。自宅を出たのは星の瞬く刻。西の空にひときわ赤くきらめく星がある。あれが火星ですか。
出発は数馬、標高680m。最後の集落を通り過ぎると、初めての道標が見つかる。三頭山登山口。露がズボンの裾を濡らし、草の実が貼りつく。湿った木橋を幾度も渡りまた渡り返す。雑木林を出ると紅葉に囲まれた都民の森ビジターセンター。標高1000m。広い駐車場。400円也の串刺しだんごでひと休み。道標に従い、木材チップの敷かれた山道を登る。まだ黄ばみもしない広葉樹林にツガやクリの大木。ブナの路を分けて、ツガ林から鞘口(さいぐち)峠。標高1140m。
桧林の中に野鳥の森ゾーン。案内板がある。<ふつう、樹木の年齢を知るには切り株の年輪を数えますが、モミの仲間では幹から生える枝の段数を数えることによって、おおよその年齢を知ることができます> 欝蒼として展望のない尾根道。黄葉したブナ林に入る。<東京都に残されたブナの森は、三頭山と奥多摩町の日原川流域だけで大変貴重です。ふつうブナの林床には、ササの仲間が密集していますが、ここではたいへん少なく、学術的に注目されています>
東峰のダケカンバ | 三頭山山頂から |
どうでもいい事だが、三頭山は三つの峰があるからではないらしい。その昔、麓の三つの村がそれぞれの頂きに祠を祀ったので御堂(みどう)山と呼ばれたという。これが山名の由来。上方に人声が聞こえると、三頭山の東峰。もしや三頭山の最高点。標高1531m。モミの大木やシラカバの中に展望台が建つ。東側は奥多摩の山々が眺望できる。目前に御前山、円いドームの大岳山、通称キューピー山。南に、木の枝越しに富士山。火照った身体に冷たい風が心地よい。
少し下って御堂峠、丸木の階段を上り返すと中央峰。標高1527m。山頂標識、周辺に数脚のベンチ。北側と南側が開けて展望がきく。それぞれに山位同定板もある。北は雲取山から大岳山などの山並。眼下に緑色の湖面は奥多摩湖。南に目を転ずれば冠雪の富士山。久々に眺めた姿。頂上広場は昼飯広場。幾組かの夫婦が静かに食事中。思い思いに腰を下ろして山上の昼食。いつもの通り食欲がない。よくない傾向。腹が減ったと大食いするI君が羨ましい。
三頭山山頂から雲取山、石尾根 |
当初の予定では、尾根筋を南へ、西原(さいばら)峠から仲の平へ下りるはず。緑色の水を湛えた奥多摩湖に魅入られたのか、誰からともなく、三頭山の北面を下りてドラム缶の浮橋を渡りたいと言う。所要時間はほぼ同じ、2時間半。それでは、御堂峠まで下りて奥多摩湖を目指しましょうか。三頭山はブナの山。展望は期待できないが、黄葉の天蓋の下を、落葉を蹴散らして歩く。多少の急坂があるものの、脚にやさしい緩やかな下り。それは初めだけ。ぼやきと泣きの物語が始まる。
3年前の冬は雪の多い年であった。積雪で、山道が消えた山を初めて歩いたのがこの三頭山だった。西原峠から避難小屋までは踏み跡がない。尾根筋を外さずに、微かに続く凹みを歩けば大丈夫だろうと、目をこらして歩いた笹尾根。避難小屋からは一転、雪のトレースが千々に乱れて山頂は登山客で大賑わい。下山路は眼下に見える奥多摩湖へ。北斜面は雪が深く雪質がいい。滑っても、飛び降りても軟着陸。思い出は雪山歩きの楽しさだけ。急斜面に辟易した記憶はまるでない。
都民の森を外れると、道標が途端に少なくなる。左に鶴峠を分け、上り返すと入小沢ノ峰。手製の山頂標識。ついで金風呂への道を見送ってツネ泣坂。ロープに掴まり立木に助けられて降りて行く。ヌカザス山を越えると鹿倉(ししくら)山に続く尾根が迫ってくる。イヨ山を下りる頃、前を歩くX君の歩き方が、どうもおかしい。右足首が痛むという。下りは、一瞬にして体重の数倍の力がかかる。せめて元気づけることしかできない。下りは続く、どこまでも。やはり三頭山は雪の山に限る。
快晴 日帰り 同行者=O,I&K君 歩行距離=10.5km 歩行時間=4時間55分
JR武蔵五日市駅7:43⇒(西東京バス)⇒8:46数馬
数馬8:55→9:45都民の森ビジターセンター10:05→10:30鞘口峠10:35→11:30東峰11:40→11:45三頭山12:30→13:20ヌカザス山13:25→14:15イヨ山14:20→15:20小河内神社
小河内神社前16:12⇒(西東京バス)⇒16:40JR奥多摩駅