水晶沢ノ頭すいしょうざわのかしら

#109 2005/6/1(木) 水晶沢ノ頭 1,278m → 畦ヶ丸 1,283






白い清楚な花が咲くシロヤシオは、ゴヨウツツジとも呼ばれる。皇室御用達の樹。愛子様にとって那須でなじみの花。それでお印としたのだろう。ツツジ類としては大木で、枝先に5枚の葉がつき5弁の花びらが咲く。桧洞丸は、那須に劣らずシロヤシオの群生地。この時期には、ツアーバスが桧洞丸へと列をなす。シロヤシオはなにも桧洞丸だけの専売特許ではない。誰もそこまでは足を伸ばさない同角ノ山稜。赤紫色のトウゴクミツバツツジやシロヤシオに目を奪われたのは一昨年のことだった。


激しい雨の翌朝、新松田から富士急湘南バスに乗る。いつもの様に、中川止まりのバスを、運転手さんにお願いすると西丹沢行きとなる。朝のこの時間に、中川は鮎釣りの放列。西丹沢には登山客のマイカーが目白押し。自然教室前に70台、桧洞丸のツツジコース入口に10台。さらに用木沢に7台。皆、桧洞丸へ登る人。今日の山行は、桧洞丸と中川を挟んで対峙する白石峠から畦ヶ丸(あぜがまる)への稜線歩き。この西丹沢からの周回こーすでは誰にも行き会うまい。


白石峠 畦ヶ丸と加入道山との分岐点 トウゴクミツバツツジ


一人北へ、白石沢に沿って遡る。鈍色の空、森閑とした山。緑濃く、鼻を衝く森の匂い。白石キャンプ場で舗装道路は終わり、車止めゲートが立ち塞がる。桧林を過ぎて、相次ぐ堰堤を巻くとケヤキの植林。歩き出してから50分、初めての道標がある。白石峠へ2.2km。二本の丸木に板を打ち付けた木橋を渡る。何度も右岸から左岸へ、左岸から右岸へ。やがて山道はザレ沢を離れて、燃える若葉の自然林へ入る。白石峠へ1.7km。滝音が聞こえる。対岸に白石ノ滝、大理石の滝。


源頭近い白石沢を木橋や石伝いに何度も渡り返す。白石峠へ1km。苔蒸したふたつのベンチ。桟道を進むともう涸沢。石に踏跡は残らない。本当にここは登山路かと半信半疑で進むと、白石峠0。7kmの道標。後ろから来た加入道山へ登る同年配の人。この先は苦しいですね、と言いながら追い越してゆく。次は滑りやすい黒土の急坂。流れるような汗。丸木の階段を喘いで上ると、そこは白石峠。倒れるようにベンチに荷も身も投げだす。見上げると、樹間から霞んだ大群山。


白石峠から畦ヶ丸までの尾根筋は、4km余りの東海自然歩道のサブコース。だから悪路はない筈。尾根通しに歩けば道に迷うことはあるまい。自然林の下りからブナの高木林に入る。足下に赤紫の花びら、トウゴクミツバツツジ。標識はないが、このコブは水晶沢のよう。シャガクチ丸も知らぬ間に通過。樹林越しに、右は道志の今倉山、左は桧洞丸か。思いの外上り下りはない稜線。やっと山頂標識とベンチのある山、バン木ノ頭。突然、静けさを破ってクマゼミが鳴きだした。


モロクボ沢ノ頭 畦ヶ丸


モロクボ沢ノ頭から畦ヶ丸への上りは、シロヤシオとミツバツツジが咲く白ザレの急坂。白ザレとは花崗岩が風化した砂粒。鎖場もある。上から5人のパーティーが警戒な足どりで下りてきた。どちらからとの問いに、白石峠からと答えると、いやあ大したものですねと関心される。この人達は忘れじのXXへ降りるという。忘れじのXXって何処?東海自然歩道と分かれて畦ヶ丸。アセビの樹林に囲まれた山頂。三角点、ひとつだけのベンチ。ケルンの台座に白石峠修復記念碑。なんでここに。


どの山頂も尾根も新緑真っ盛り。だから展望のない山歩き。慰めは木の花。畦ヶ丸の下山路は白ザレの道、白い花咲く道。アセビとシロヤシオの群落。釣り鐘状の花が咲くドウダンツツジ。振り返ると緑の葉陰から畦ヶ丸が見える。左方に踏破した稜線が見える。時間を計算すると、急げば1台前のバスに間に合いそうだ。だが、下山を邪魔する悪路。2連の梯子と鎖場。白ザレの大崩れを右に見て、善六のタワから桧林の急斜面。やっかいな西沢の沢歩き。どうやらバスに乗れそうだ。


曇ときどき晴れ 日帰り 単独行 歩行距離=13km 歩行時間=6時間20分

小田急、新松田駅715⇒(富士急湘南バス)⇒830西丹沢自然教室
西丹沢出合8351055白石峠11101140水晶沢ノ頭→1245モロクボ沢ノ頭12551320畦ヶ丸13301350善六ノタワ→1530西丹沢出合
西丹沢自然教室1550⇒(富士急湘南バス)⇒1650新松田駅