塔ノ峰 とうのみね

#104 2005/4/1(金) 塔ノ峰 566m ← 明星ヶ岳 924




春の天気は3日続かずという。花曇り。東京の桜は、予想日より4日遅れて開花宣言。今日は箱根会の日、奥湯本泊り。悪餓鬼共がテーブルを囲んで、翌朝まで中国語勉強会の日。勝つ以外に何がありますかと開き直っても、斬った張ったにオウンゴール勝ちなんかはない。負けるのも想定内ですとは負け惜しみ。いつものように山登りしてからチェックインしよう。


早朝の箱根登山鉄道は直通の強羅行き。箱根湯本駅で乗り換える必要はない。葉が開きだしたアジサイを掻き分けて、車体をきしみらせながら走る満員電車。4回スイッチバックをすると終点強羅着。長い石の階段を下り、宮城野橋で早川を渡る。見上げると、正面に聳える明星ヶ岳。山頂付近に、大文字が刻まれた山。朝の山里に、春を告げる鴬の鳴声。



保養所が最後の民家。通り過ぎると山裾に道標、明星ヶ岳登山口。山頂まで1時間、標高差500mを上る。集合アンテナの作業道を迂回して、ジグザグに上る山道はきつい。赤松が混じる自然林、生い茂るハコネザサ。上方から中年の女性が、携帯ラジオを鳴らしながら下りて来る。今日の山行で出会った唯一の人。箱根には熊や鹿は居ませんよ。さては狼除けか。


明星ヶ岳から始まる塔ノ峰への稜線歩き


樹木が取り払われて急に開けた視界。ここは大文字焼の現場、しかも見晴し場。眼下に宮城野、強羅の別荘地。後ろに連なる中央火口丘。火口を晒した早雲山、その奥に神山、駒ヶ岳。右方に丸いドームの金時山、長尾山、丸岳。だが、生憎の曇天。富士山は厚い雲の中。富士の見える場所はここだけって云うじゃない、残念。山道の脇に大文字焼の説明板がある。


「箱根3大祭りに数えられている大文字焼は、毎年816日、この明星ヶ岳で行われます。この行事は、大正10年、避暑客の慰安のために始められたものですが、併せて全山の有縁無縁の諸霊を慰める、うら盆の送り火としても行われています。当日は乾燥したシノダケ、約350束が並べられ、夜7時過ぎ、花火を合図に赤く浮かび上がり見事な夏の風物詩となります」


明星ガ岳 塔ノ峰


尾根筋の笹が刈られて、枯れ草の幅広い防火帯が続く。その高みが明神ヶ岳山頂。樹木に埋もれて朽ちた鳥居、崩れかかった小社、御岳大神宮と彫られた石碑。道標に案内板。曰く、「明星ヶ岳、標高(924m)は古期外輪山の一つです。この山で大文字焼が行われるので大文字山とも呼ばれています。大の字の一画は108メートル、二画は162メートル、三画は81メートルです」


ひとまず昼食。さて、なだらかな草地から始まる尾根歩き。1時間かけて4つの小ピークを越えて標高差500mを下る。足にやさしい落葉の散歩道。芽吹きを待つ自然林、静かな桧林、歩いて気持のいい松林。3つ目のピークの巻き道はハコネザサのトンネル。突然前方に現れたキツネ。互いに相手を見つめて品定め。コンにちは。デジカメを構えると、Uターンしてドロンと消える。


中央火口丘、右は仙石


一旦、舗装された林道を15分歩いて、丸い山の麓が塔ノ峰登山口。桧の森を真っ直ぐに10分登るとそこが山頂。山頂標識、三等三角点、案内板、「塔ノ峰(566m) 西インドの阿育(アショカ)大王が仏舎利(釈尊の遺骨)を安置した宝塔の一つが、この山の中腹、阿弥陀寺の岩屋で見つかったといわれ、この山を塔ノ峰といいます。山頂には小田原北条氏の出城の跡が見られます」


塔ノ峰は阿弥陀寺の裏山。松と桧の欝蒼とした山頂から南へ、低木の照葉樹林帯を一直線に降る。アオキの葉陰からのぞく赤い実。杉林に入ると、大きな岩を乗り越えて下りる九十九折れ。岩の上にちょこなんと座す恵比寿様の石像。水音が聞こえると阿弥陀寺はすぐそこ。6月にはアジサイが咲き乱れ、賑わう寺。今はひっそりと咲く紅梅。山門を下りながら、気持ちを勝負に切り替える。


曇 日帰り 単独行 歩行距離=9.1km 歩行時間=3時間5分

箱根登山鉄道、強羅駅920945登山口→1045明星ガ岳11051155林道12101220塔ノ峰12251245阿弥陀寺12501310箱根湯本駅