澁海、名古屋パフェを食う!!
「それは、パフェ以外との戦い。 編」



4月12日、澁海はかの地へ降り立っていた。
それはあの「伝説」の喫茶店がある町。
そう、「名古屋」。
澁海はその名古屋の地に遠征に来ているのだ。

名古屋には伝説の喫茶店がある。
ネット上にも多くの情報が存在し、その道の人間には有名な店。
数々の伝説のメニューが、挑むものに畏怖の念を抱かせ、
そして、敗北を与える恐怖の店。
「マウンテン」。
そこには、パフェ斬り屋の心をくすぐるメニューがあった。
「和風パフェ」。
ネット上でその名前と写真を見つけたとき、澁海の心がときめいた。
その不思議で異様な姿が、パフェ斬り屋の熱い魂を呼び起こしたのである。
そして今、彼の地に立っているのだ。

今回の面子は東京組が4人、さらに現地で2人を追加し、総勢6名。
名古屋民の1人の案内で、一向はその店へ向かう。
駅からはかなり離れた位置にあり、あいにくの雨の中を
一向は粛々を歩く。
その胸には何が去来するのか・・・・・・・

15分ほど歩いたころ、一向の前にその店は姿を現した。
大きな山の看板、駐車場、その駐車場の奥にひっそりと立つその店。
「こ、これが!!」
確かにそこは喫茶店マウンテンであった。
これが、伝説の店、到達した感動とともに澁海の口をついて出た最初の言葉。
「こんなたたずまいの店、普通なら絶対はいらないぞ・・・」
見た目にはかなり寂れていた。
山奥にある繁盛してなさそうな飲食店のような佇まいである。
だが、その見た目とは裏腹に、駐車場にはかなりの車が止まっていた。
「・・・結構人気のあるお店なのか?」
その外観にやや躊躇しながらも、おそるおそる一向はお店に足を踏み入れる。
「むぅ!」
中はお客に溢れていた。
がらがらなのを想像していただけに、驚きである。
「お客様、何名ですか?」
店員がやってきて聞いてきた。
「6人です」
すかざず答える。
「20分ほどお時間いただくことになりますがよろしいですか?」
「はい」
待ち時間があることに驚きながらも澁海は答える。
しばしの待ち時間。
6人席があくまで待っている間に、結構な客の入りがあった。
恋人同士から親子連れまで、客層もさまざま。
(本当にここはマウンテンなのか?)
あまりの普通のお店っぷりに澁海の頭にそんな疑問まで浮かぶ。
しかし、食事中の客のテーブルを見たとき、そんな疑問はいっぺんに吹き飛んだ。
(な、なんだ?!あのお皿のサイズは?!!)
スパゲッティが入っているにはあまりにも異常なサイズの皿がそこには乗っていた。
あからさまにおかしい。
そういえば収集した情報の中には「量がおかしい」というものもあった。
これがその一端といったところなのであろう。
(これは、期待してもよさそうだな・・・・・)
それを見た澁海はまだ見ぬ敵に想いをはせた。
・・・・それが、どれほどの苦痛をともなうかも知らずに・・・・・

席に着いた6人は、早速メニューを確認した。
(ふむ・・・一見すると普通のメニューだが・・・・)
並んでいるメニューは、「一部を除いて」は一見普通のメニューである。
そう、ごく一部を除いて。
「甘口抹茶小倉スパ」
「甘口メロンスパ」
「甘口いちごスパ」
「甘口ばななスパ」
「・・・・・いや、あからさまにおかしいっしょ!」
しかも一見しただけでは普通だったメニューも、よくよく見ると何かおかしい。
「納豆サボテン玉子とじスパ」
「うどん風カレースパ」
「アボガドピラフ」
「納豆ピラフ」
おかしなものがたくさん紛れ込んでいる。
「おいおい・・・」
澁海の頭に、先ほど見た異常なサイズの皿が浮かんだ。
(きわものでも、あの量が出てくるのか・・・・)
背中にいやな汗が浮く。
とはいっても、このままでは戦いも始まらない。
かくして6人は作戦会議を開始する。
量・質から考えて、全てきわものを注文すると玉砕するのは目に見えている。
喫茶店の性質上、注文は一人一品。
少なくとも、澁海の注文「和風パフェ」を除いた5品は注文する必要がある。
協議の結果、注文は以下の6つに決まった。
「和風パフェ」
「甘口いちごスパ」
「ニワトリピラフ」
「スペシャルエビピラフ」
「なすのトマトソースパスタ」
「ベーコンとほうれんそうのパスタ」
一応目的はパフェのため、きわものは「甘口いちごパスタ」のみとした。
・・・とはいっても、「ニワトリピラフ」の名前がちょっとおかしいが。
(なんでチキンピラフじゃないんだろう・・・・?)
「パフェはいつお持ちしますか?」
「先に」
「さ、先にですか?」
とちょっと驚かれながらも注文は終了し、あとは待つのみになった。

しばらくの後。パフェがやってきた。
「・・・・ふむ、見た目は普通だな・・・・」
和風パフェは、トッピングこそタイヤキがあったりあんこがあったりするが、
見た目には普通のパフェである。
「いただくか・・・」
早速食してみる。
「・・・・・む!」
ぱく、ぱくぱく、ぱくぱくぱく-------!!
「う、うまい!これはうまいぞ!!」
タイヤキ、生クリーム、あんこ、抹茶アイス、カステラ、バニラアイス。
全てが美しく調和し、まろやかな味が口の中に広がる。
そう。和風パフェは間違いなく美味だったのである。
5分程度で、あっという間に食べ終わった。
「これほどの美味とは・・・・・・マウンテン侮りがたし・・・・」
口に残るほのかな後味を楽しみながら、澁海はつぶやいた。
かくしてマウンテン和風パフェとの戦いは、満足のいく勝利で終わった・・・・・

はずだった。

しかし、マウンテンはそのように甘いものではなかった。
いや、ある意味では甘いものではあったのがその甘さが並ではなかったのだ。
パフェを食べ終わったころ、6人の前には残りの注文がやってくる。
その中であからさまに異質な外見と匂いをさせているものがあった。
「甘口いちごスパ」
ピンク色の麺、その上にたっぷりと乗った生クリーム、ちりばめられるいちごとキュウイ。
麺をストロベリーアイスにすれば、そのままデザートとして出てきてもおかしくない構成である。
それが、よりにもよって「スパゲッティ」という名称を持って出てきたのである。
しかもいちごやキュウイまで暖かくなっており、生クリームも少しずつ溶け出している。
その姿が放つ威圧感は、過去食べたあらゆるものを凌駕した。
(そもそもこれは正しい料理として認識していいのか?)
そんな疑問が浮かぶくらいのインパクトだった。
しかも、皿が皿だけに異常に量がある。
「これ・・・・本当に食べるのか・・・?」
あまりに異様な光景に、思わず澁海はその場にいる全員に問いかけた。
他の5人も唖然としてその食べ物らしいものを見ている。
(く!しかし・・・やらぬわけにはいくまい・・・・)
覚悟を決めた澁海は、手元のとり皿にその「スパゲッティとおぼしきもの」を取ると、
意を決して口へと運んだ。
「・・・・・・・・ごふぁあ!」
澁海の顔が苦痛にゆがむ。
それは恐ろしいほど甘かった。パスタの麺が甘かった。
それは、ありえない味だった。
他の5人もそれぞれ少しずつ取り、食べ、そして澁海と同じ反応を示した。
その時点で4人が脱落した。
4人はまるでそこにそれが存在しないかのように、残り4つのお皿から食べ物を取り、
「これ美味しいね〜」「コレもうまいぞ」と感想を述べ合い始めた。
事実、他の皿の食べ物がほとんどがあたりで美味しかった。
(「ベーコンとほうれんそうのパスタ」はかなりのはずれではあったが)
その様子についつい澁海も他の皿で舌鼓を打った。
が、すぐに澁海の脳に危惧が浮かぶ。
(まずい、このままでは「甘口いちごスパ」が残ってしまう!
「甘口いちごスパ」を残すのは敗北のような気がする・・)
生き残ったもう一人の甘党の男もそう思ったようであった。
二人は視線を一度合わせると・・・・再びいちごスパの山から取り皿へとそれを取った。
再び食べる。
「・・・・・・・・ごふぁあ!」
2人の口に再び恐怖がよみがえる。
と。
「ごふぁあああああ!」
さらなる脅威の味に澁海の顔がさらに苦痛に歪んだ。
それはこの「食べ物のようなもの」の主役であろういちごの所為であった。
そのいちごが恐ろしいほどすっぱい。甘さとすっぱさの二重苦はさながら荒行である。
このすっぱさは、いちごが熱せられた所為というのもあるが、最大の理由は、
「スパゲッティがあまりに甘いため、相対的にいちごがすっぱい」のようであった。
この瞬間、フルーツを食べることはあきらめることに決定した。
苦痛に身もだえしながらも2人はさらに食べ進む。
この時点ですでに生クリームは溶けきっており、全てが麺にからんでいた。
さらなる苦痛が二人を襲う。
「もう、こうするしかない!」
本来甘党である澁海の相棒は、結構辛口だった「ニワトリピラフ」を麺に混ぜて食べ始めた。
(甘党で辛いのが駄目なこいつを、ここまで追い詰めるとは!!)
その姿に改めてこの敵の大きさに澁海は気づく。
だが、もう戦い続けるしかない。
むしゃむしゃむしゃ。
「ごふぁあ!」
むしゃむしゃむしゃ。
「ぐふぅあ!」
むしゃむしゃむしゃ。
「・・・・ぅ・・・・・」
むしゃむしゃむしゃ。
「・・・・・か、完食・・・・・」
1時間もの時間をかけ、2人はやっとの思いでその敵を制覇した。
残りの4人が、2人に拍手を送る。
だが2人の胸には「達成感」などというあまっちょろい思いはなく、
ただただ「苦痛」のみに満たされていた。
「・・・・・こんなもの、二度と食うまい・・・・・」
かくしてマウンテン和風パフェとの戦いは、
和風パフェとまったく関係ないところで苦しむ、苦痛の荒行として終わったのであった・・・・・

マウンテンに対する澁海の考察:
お店としては、量も多いし、おいしいものも多そうなのでかなりよさそうな感じを受けました。
(今回頼んだ中で、ニワトリピラフがすごく美味しかったです)
和風パフェもかなり美味しく、パフェ好きなら一度食べておいても損はないと思います。
・・・・ただし一部のきわものに関しては、食べておいても損しかありません(涙



実はサイズも結構あったり。 裏にはタイヤキが。
美味しく完食。
これは本当に食べ物なのか・・・ フルーツは無理(汗


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