2001年3月4日。
社員旅行に出ていた澁海は、長崎の空港に立っていた。
「ま・・・・まずい・・・・・」
澁海は・・・・・非常に焦っていた。
社員旅行の日程は2泊3日。
今日はその最終日なのであるが、
初めて訪れる土地にも関わらず、澁海はこの時点で1つもパフェを食べていなかったのだ。
「むむ、パフェ斬り屋会長ともあろう俺が・・・・」
(なんとかせねば)
そんな強い思いが、澁海の胸に生まれていた。
と、その時。
「む!!」
きらりーん!!
澁海の目が怪しく光った。
空港内に喫茶店を発見したのだ。
「あそこだ」
澁海はついに狙いを定めた。
静かにその店に足を踏み入れる。
澁海の胸は、期待に高鳴っていた。
長崎といえばおいしい食べ物がたくさんある。
きっとパフェも趣向を凝らされているはず!!
「カステラパフェ」とか。
「長崎ちゃんぽんパフェ」とか。
「皿うどんパフェ」とか。
そんなまだ見ぬ強敵たちとの戦いを期待して、澁海の熱き魂は燃えていた。
そうこうしているうちに、店員に案内され、
澁海は席につく。
横にはメニュー、それを手にとる。そして・・・・
「いざ・・・・・・勝負!!」
メニューを開いた。
「のおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
メニューにあったパフェは、
「チョコパフェ」
「ストロベリーパフェ」
「コーヒーゼリーパフェ」
の3つだけで、
「カステラパフェ」も「長崎ちゃんぽんパフェ」も「皿うどんパフェ」も、
そこには存在していなかった。
「く!!長崎は普通だ!!」
澁海は認識を新たにした。
と、現実に戻ると1つ目についたパフェがあった。
「コーヒーゼリーパフェ」
おいしそうだ。
澁海は早速注文をしてみる。
しばらく後、そのパフェがやってきた。
「のおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
もう一度澁海は叫んだ。
なんとパフェの量が写真に比べて異常に少ないのだ。
写真では、器いっぱいまでゼリーが入っていて、
その上にアイスと生クリームが乗っていたのだが、
実物では、アイスや生クリームを合わせても器の高さにまでいかない。
「だ・・・・だまされた?!!」
澁海はショックに立ち直れなくなっていた。
とはいえ、食べる前に負けても仕方がない。
食べることにした。
一口。
「・・・・お?」
二口。
「・・・・おお?」
一気に流し込む。
「むう!!うまい!!」
コーヒーゼリーとアイスと生クリームのバランスが非常によく、
とても上手い一品であった。
それだけに・・・・・
「この量はやばいだろ!!」
澁海の声が・・・・悲しく響いていた・・・・・
メニューの写真も撮っておけばよかった。