助動詞について


基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形


古典の助動詞は基本的に高校生になってから習うものですが、よく用いられる助動詞については覚えておいた方が、解釈する際に役立ちます。そこですべてではありませんが、重要と思われる助動詞の解説をここでします。以下に挙げる助動詞はなるべく覚えるようにしましょう!!




【る・らる】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
るる
るれ
れよ
らる
られ
られ
らる
らるる
らるれ
られよ


●接続

・「る」………四段・ナ変・ラ変動詞の未然形につく。
・「らる」……上一段・上二段・下一段・下二段・カ変・サ変の未然形につく。

●意味

@受身……他からそうされる意味をあらわす。「〜サレル」「〜レル」
A尊敬……その動作をする人に対する尊敬の意味をあらわす。「オ〜ナル」「〜ナサル」
B自発……そうするつもりはないのに、自然にそうなる意味をあらわす。「自然ニ〜レル」
C可能……可能の意味をあらわす。「〜デキル」

●例文

@法師は、数多所あまたどころ食はながら、事故ことゆゑなかりけり。(『徒然草』)
「法師は(きつねに)いろいろな部分を噛みつかれたが、大事にはいたらなかった」
A亀山殿の御池に、大井川の水をまかせられむとて、大井の土民に仰せて…(『徒然草』)
「亀山殿のお池に、大井川の水をお引きになろうとして、大井の土民におっしゃって…」
B今日はみやこのみぞ思ひ遣らるる。(『土佐日記』)
「(みな)今日は京への思いを自然とはせることになる」
C庵なども浮きぬばかりに雨降りなどすれば、恐ろしくて寝も寝られず。(『更級日記』)
「家なども浮くのではないかというくらいに雨などが降って、恐ろしくて寝るに寝ることもできない


【ず・ざり】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
(ず)
ざり
ざら
ざり
ざる
ざれ
ざれ


●接続

・活用語の未然形に付く。
 ※「ざり」活用は、下に助動詞が続くときに使う。

●意味

@打消……打消・否定の意味をあらわす。「〜ナイ」

●例文

@京には見え鳥なれば、皆人見知ら。(『伊勢物語』)
「京では見られない鳥であるので、誰も見知らない


【む】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
(ま)
む(ん)
む(ん)


●接続

・活用語の未然形につく。

●意味

@推量……物事の実現を予測したり推量したりする意味をあらわす。「〜ダロウ」
A意志……あることを実現しようとする意志の意味をあらわす。「〜ヨウ」
B仮定……そうなることを仮定する意味をあらわす。「〜ナラバ」
C婉曲……断定することを避けて、遠回しに言う意味をあらわす。「〜ヨウナ」
D適当……あることに対して、そうすることが当然だという意味をあらわす。「〜ベキダ」「〜ガヨイ」
E勧誘……相手に対してそうするように誘う意味をあらわす。「〜シナイカ」

●例文

@今宵も吾がひとり寝。(『万葉集』)
「今夜も私一人で寝ることになるのだろうか
A仰せごとに従ひて求めにまか。(『竹取物語』)
「命令に従って探しに参りましょう
B思はむ子を法師になしたらこそ心苦しけれ。(『徒然草』)
「愛する子がいたならば、その子を法師にしているといことこそ痛々しいものだ」
Cひがひがしから人の仰せらるること (『徒然草』)
「つむじ曲がりで、物の趣も分からないような人のおっしゃることは」
D言ひ閉ぢめつることは、さてこそあら。(『枕草子』)
「一度口にしたことは、そのまま押し通すべきだ
E今さらになにかは大殿籠おおとのごる。起きさせ給は。(『栄華物語』)
「今さらになって、なぜお休みになるんですか。起きなさいませんか


【まし】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
まし
ましか
ませ
まし
まし
ましか


●接続

・活用語の未然形につく。

●意味

@反実仮想……………現実と反対の事を述べて、「モシ…ナラ、〜ダッタロウニ」の意味をあらわす。
Aためらいの意志……ある事態に直面したときにどうしようかと迷う意味をあらわす。「〜カシラ」

●例文

@まして竜を捕らへられましかば、また事もなく我は害せられなまし。(『竹取物語』)
「もし竜を捕らえていたならば、実に簡単に竜に殺されてしまっていたであろう
Aしや、せまし、せずや、あらましと思ふことは… (『徒然草』)
しようかしらしないでおこうかしらと思うことは…

●ポイント

ましかば
ませば
     「…ならば〜だろうに」
せば


【き】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
しか


●接続

・活用語の連用形につく。

●意味

@過去(体験)……過去に直接体験した事実などの意味をあらわす。「〜タ」「〜テイタ」

●例文

@鬼のやうなるもの出で来て殺さむとしき。(『竹取物語』)
「鬼のようなものが出てきて(私を)殺そうとした」


【けり】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
けり
けら
けり
ける
けれ


●接続

・活用語の連用形につく。

●意味

@過去(伝聞)……人づてに聞き知った過去の出来事を伝聞として述べる意味をあらわす。
         「〜タトイウ」「〜タソウダ」
A気づき……………今まで気づかなかったことに気づいたという意味をあらわす。「〜タノダ」
B詠嘆………………過去の詠嘆・感動の意味をあらわす。「〜タコトヨ」「〜タナァ」

●例文

@昔、男ありけり。(『伊勢物語』)
「昔、ある男がいたという
Aかかる人も、世に出でおはするものなりけり。(『源氏物語』)
「このような人も、この世に生まれていらっしゃるものだったのだ。」
B限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり(『源氏物語』)
「今はもう私の命もこれまでとなります、そのお別れの死への道が悲しいと思われますにしても、やはり私が行きたい道は生の道でございますことよ

●ポイント

和歌中の「けり」 → 詠嘆



【つ・ぬ】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
つる
つれ
てよ
ぬる
ぬれ


●接続

・活用語の連用形につく。

●意味

@完了……動作・作用が実現し、完了した意味をあらわす。「〜タ」「〜テシマッタ」「〜テシマウ」
A強意……動作・作用の実現を確信したり、確認する意味をあらわす。「〜テシマウ」「確カニ〜」

●例文

@雀の子を犬君が逃がしつる。伏せ籠のうちにこめたりつるものを。(『源氏物語』)
「雀の子を、犬君が逃がしてしまった。伏せ籠の中に閉じこめてあったのに。」
Aはや舟に乗れ。日も暮れ。(『伊勢物語』)
「早く舟に乗れ。日も暮れてしまう。」

●ポイント

「ぬ」の識別

未然形+「ぬ」or「ぬ」+体言
        → 助動詞・打消「ず」の連体形
連用形+「ぬ」or「ぬ」+「。・べし」
        → 助動詞・完了「ぬ」の終止形



【たり】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
たり
たら
たり
たり
たる
たれ
(たれ)


●接続

・活用語の連用形につく。

●意味

@完了……動作・作用が完了した意味をあらわす。「〜タ」
A存続……動作・作用の結果が存続している意味をあらわす。「〜テイル」

●例文

@しれものははしりかかりたれば、おびえまどひて御簾のうちに入りぬ。(『枕草子』)
「馬鹿者は走り寄って飛びかかったので、(猫は)おびえ動転して御簾の中に入ってしまった。」
Aかきつばたいとおもしろく咲たり。(『伊勢物語』)
「かきつばたがたいそう美しく咲いている。」


【べし】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
べし
べく
べから
べく
べかり
べし
べき
べかる
べけれ


●接続

・活用語の終止形につく。

●意味

@推量……推量の意味をあらわす。「〜ダロウ」「〜ソウダ」
A意志……意志の意味をあらわす。「〜ウ」「〜ヨウ」
B可能……可能、または可能性を推測する意味をあらわす。「〜デキソウダ」「〜デキルダロウ」
C当然……当然の意味をあらわす。「〜ハズダ」「〜チガイナイ」
D命令……命令の意味をあらわす。「〜ナサイ」
E適当……適当の意味をあらわす。「〜ガヨイ」「〜ガ適当ダ」

●例文

@いみじく思し嘆くことあるべし。(『竹取物語』)
「ひどく思い嘆くことがあるそうだ
Aこの一矢に定むべしと思へ。(『徒然草』)
「この一矢で決めようと思え」
Bさりぬべき折りを見て、対面すべくたばかれ。(『源氏物語』)
「適当な機会を見つけて、逢うことができるように工夫してくれ」
C藤波の咲き行く見ればほととぎす鳴くべき時に近づきにけり(『万葉集』)
「藤の花が次々に咲いていくのを見ると、ほととぎすが鳴くはずの時節に近づいてしまったのだなぁ〜」
D此の内一句入集すべし
「このうちの一句を入集させなさい
E家の作りやうは、夏をむねとすべし。(『徒然草』)
「家の作り方は、夏に適することを主とするのがよい。」


【なり@】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
なり
なり
なり
なる
なれ


●接続

・活用語の終止形につく。

●意味

@推定……(音や声が聞こえることから)推定の意味をあらわす。「〜ヨウダ」
A伝聞……(人のうわさなどによる)伝聞の意味をあらわす。「〜ソウダ」「〜トイウコトダ」

●例文

@呼ばすれど、答へざなり。(『更級日記』)
「呼ばせるが、答えないようだ。」
A奥山に猫またといふものありて、人をくらふなると人のいひけるに(『徒然草』)
「奥山に猫またというものがいて、人を食うそうだよと人の言っていたのを」


【なりA】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形
なり
なら
なり
なり
なる
なれ


●接続

体言や体言に相当する語につく。

●意味

@断定……断定の意味をあらわす。「〜デアル」「〜ダ」
A存在……存在の意味をあらわす。「〜ニアル」「〜ニイル」

●例文

@この吹く風は、よき方の風なり。(『竹取物語』)
「この吹く風は、良い方角へ吹く風だ
A駿河なる富士の高嶺(『万葉集』)
駿河にある富士の高嶺」

●ポイント

「なり」の識別

終止形+「なり」 → 助動詞・伝聞推定
連体形+「なり」 → 助動詞・断定



【り】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形


●接続

四段動詞の已然形サ変動詞の未然形に付く。

●意味

@完了……動作・作用が完了した意味をあらわす。「〜タ」「〜テシマッタ」
A存続……動作・作用の結果が存続している意味をあらわす。「〜テイル」

●例文

@大納言の参り給へなりけり。(『枕草子』)
「大納言殿が参上なさったのであった。」
A瓶に花を挿せ。(『伊勢物語』)
「花瓶に花が挿してある。」


【】

●活用形

基本形
未然形
連用形
終止形
連体形
已然形
命令形


●接続

・活用語のにつく。

●意味

@……
●例文

@